寄贈で蔵書増 大阪発「まちライブラリー」発足10年

川本裕司
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 大阪発祥のミニ図書館「まちライブラリー」が4月で発足10周年を迎える。空き店舗や自宅など、誰でもどこでも始められる簡便さと、寄贈を通じて本を介したつながりを築く仕組みが共感を呼び、今は全国約700カ所まで広がった。

 大阪市中央区森ノ宮中央2丁目の商業施設もりのみやキューズモールBASE。ここに大阪府内最大のまちライブラリーがある。

 蔵書数3千冊で、2015年にスタートした。まちライブラリーは読み終えた本を寄贈してもらう仕組みで、現在は児童書や小説、美術書など1万6千冊がそろう。無料で本を借りられる会員は6600人おり、貸し出しは月約2千冊に達している。

 FMラジオのスタジオがあり、公開生放送が実施されることもあるほか、会員による英詩音読会や「大人の絵本鑑賞会」など、さまざまなイベントが毎日のように開かれている。

 担当の川上律美(りつみ)さん(58)は「声を出してもいい図書館」と表現する。併設のカフェでは高校生が勉強していたり、談笑を楽しむ人たちがいたりする。

 泉大津市豊中町1丁目のホンノワまちライブラリーは、高島直子さん(45)の自宅前にある巣箱型の本箱だ。児童書を中心に約100冊をそろえ、備え付けのノートに名前を書けば3週間をめどに借りられる。

 泉大津市内の友人と2人だけで2014年に始めたが、今は近隣の貝塚、岸和田、和泉各市に、まちライブラリーが広がった。

 高島さんは「始めるハードルが低く、本を入れ替える楽しみもある。ノートに感想メッセージが書かれているとうれしい。活動を通じていろんな人と知り合い、自分の住む街に目が向くようになった」と話す。

 まちライブラリーを提唱したのは、大阪市出身の団体職員礒井純充(いそい・よしみつ)さん(62)だ。大学卒業後に不動産会社・森ビル(東京)に入社し、六本木で有料会員制ライブラリー「アカデミーヒルズ」などを手がけた。

 そうした中で、収益とは関係なく、本を通して街の中で学べる「たまり場」を作れないかと考えた。持ち主が感想メッセージをポケットに入れて寄贈した本を集め、図書館代わりに貸し出す仕組みを思い立った。

 11年、実家が所有していた大阪市中央区のビルの一室からまちライブラリーをスタートした。喫茶店や病院、寺、公民館、家庭などさまざまな場所にできたほか、日時を決めて公園で開く「移動型」のライブラリーもある。

 いま全国47都道府県に広がったライブラリーのうち、4分の1の約170カ所が府内で、もちろん全国一多い。礒井さんは「人との敷居が低い大阪人に合っている」と分析する。

 現在は一般社団法人まちライブラリーで代表理事を務める礒井さんは「本を置くだけの負担がかからない形で普及してきた」と振り返る。現在あるライブラリーのうち貸し出しもしているのは7割ほどだが、人気の本は意外と重ならないという。「本が人に伝わるのは、(著者の)知名度や過去の売れ行きではなく、『共感』です」と礒井さんは力を込める。(川本裕司)