新必修科目教えやすい教科書 専門外の教員に目配り

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宮坂麻子、阿部朋美、土屋亮 伊藤和行、杉原里美、編集委員・氏岡真弓
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 来春から高校で使われる教科書の内容が決まった。情報や地理総合など新たに全員が学ぶことになる科目では、教え方に不安を抱く教員への配慮がにじんだ。一方、北方領土や竹島、尖閣諸島など領土関連では、政府見解を細かく紹介する記述が目立った。

 新たに必履修になった科目は、その科目の免許がない教員も教える可能性が高い。こうした、免許を持たなくても教科を教えられる「免許外教科担任」を自治体が許可した件数は、2016年度で3760件にのぼった。

 このうち3分の1を占める情報科では、数学や理科、保健体育など他教科の免許を持つ教員が教える高校も少なくない。「情報Ⅰ」は高校の3年間で2単位しかなく、地方の小規模な高校では、専門の免許のある教員を配置できない現実がある。

 情報Ⅰでは、プログラミングや情報デザイン、データ活用など、専門的な分野も扱う。今回、検定を通った教科書をみると、免許外の教員も教えることを意識して作られたことがうかがえる。

 図説やイラストを多用した教科書を作った日本文教出版は「免許を持たないのに教えざるを得ない教員がいることを想定し、授業準備の負担がなく教えられるものにした」という。プログラミング言語も、小学校でも扱う「スクラッチ」にし、一つ一つの操作や意味を丁寧に図つきで示した。

「教材研究の負担かからないように」

 実教出版は、詳しく解説した従来のスタイルの教科書に加え、長文を読むのが苦手な生徒への配慮も含め、新たに図解中心の教科書をつくった。「高校入学までの履修状況やICT(情報通信技術)環境、担当教員の専門性など多様な状況が想定されるため、より教えやすく理解しやすい内容を意識した」と話す。そのほかにも「教材研究に負担がかかるようなものは避けた」(東京書籍)と、教員への配慮を指摘する声が多かった。

 国による対話的な学びの推奨も重なり、結果的に実践や実習例も増えた。数研出版は、紙面の半分以上を図やイラストにした教科書を作った。「視覚的な見やすさ、わかりやすさと、実習の豊富さを両立させた」という。開隆堂出版は「授業1コマで見開き2ページを進めればいいように構成し、毎ステップごとに実習例を入れた」と説明する。別の会社の担当者は「生徒同士で議論させたり活動させたりする内容が多ければ、専門知識のない教員でも授業は成り立つ」とみる。

 図説を多用した教科書と別に、より専門的な内容を盛り込んだ教科書を出した社もある。「他教科と違い、生徒の学力差というより、教員の専門性や地域差で、生徒の学習にかなり差が出るかもしれない」と懸念する担当者もいた。

 情報は、25年以降の大学入学共通テストで出題される方向で検討が進む。情報科に詳しい電気通信大学の中山泰一教授は「2単位の教科は他にもあるのに、情報科だけ、免許外の教員が教えたり、他教科とあわせて教えたりすることが当たり前になっていることが、根本的な問題。情報教育が求められ、入試科目にも入る時代にこれでいいのか」と、専門性のある教員配置を求める。

 「地理総合」も新たに全員が学ぶ科目になり、同様の課題を抱える。これまでも必修だった世界史と比べ、地理を専門に教える教員は少ない。ある出版社の担当者は「高度な内容の記述はできるだけ避けるようにした。地理専門の教員でなくても教えられるよう工夫した」と打ち明ける。

 授業の進め方や成績評価の案をつくって提供する出版社もあった。「四半世紀前だったら『そんなものいらない』といわれたが、いまは歓迎される。新しく必修となる科目では需要が高い」(担当者)という。宮坂麻子、阿部朋美、土屋亮

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