アジアは支配対象、女性は売春婦…米国で続く差別の歴史
米国でアジア系住民に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が増えている。道ばたで突然暴行されるなどの事案が急増しており、昨年9月には日本人ジャズピアニストの海野雅威(うんのただたか)さんがニューヨークで少年少女の集団に襲われて重傷を負った。人権団体「ストップ・AAPI・ヘイト」によると、米国で起きたアジア系へのヘイトクライム関連の事案は昨年3月から今年2月までに3795件。なぜアジア系住民が標的にされるのか。彼らは米国社会でどのような歴史をたどってきたのか。一橋大大学院の貴堂嘉之(きどうよしゆき)教授(米国移民史)に聞いた。
――米国でアジア系へのヘイトクライムが増えているのはなぜですか。
新型コロナウイルスの流行で、トランプ前大統領が「チャイナウイルス」「武漢ウイルス」などと中国をめぐってレッテル貼りをしたことが直接的な原因なのは間違いありません。移民国家の米国では、建国以来ずっと、特定の移民集団が伝染病などと結びつけられて差別や排斥運動の対象にされてきました。こうした行為は歴史的に何度も繰り返されてきたのです。
今回背景にあるのが米中新冷戦と呼ばれる覇権争いです。中国が力をつけて台頭し、5Gなどの最先端技術をめぐって両国は激しく競い合ってきました。その対立関係が日常レベルにも下がってきて、一般市民までが中国に対して敵対心や憎悪感情を抱くようになりました。しかし、中国人か日本人かという区別は簡単にできないため、全体がアジア系米国人として狙われています。アジア系は比較的所得が高いため、金品狙いの場合もありますが、主に弱い女性や高齢者が、新型コロナによるストレスの憂さ晴らしの標的になっていることが多いのが現状です。
――日本人も、過去に差別の対象となっていたのですか。
たとえば、20世紀初頭がそ…