中国で消えゆく古民家 アインシュタインが来た住宅街も

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上海=宮嶋加菜子
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 中国では今、全国で「都市改造」の号令のもと、古い住宅地が急速に姿を消しつつある。記者が暮らす上海でも、市中心部で続々と立ち退きが始まり、歴史ある住宅街の取り壊し作業が進んでいる。19世紀のアヘン戦争後、租界(外国人居留地)が設けられた上海では、西洋の風情漂う独特の街並みが形成されてきた。「上海文化の根」が急速に消えゆく街を歩いた。

 上海の観光名所・豫園。周辺はかつて城壁に囲まれ、その城壁内には古くから地元の住民たちが暮らしてきた。フランス租界にもほど近いこの一帯は古くから「南市」と呼ばれ、上海人にとっては歴史ある下町のような地区だ。今、この南市地区で、住民の立ち退きが急速に進んでいる。

 かつて楕円(だえん)状に整備された城壁の跡は今、「中華路」と「人民路」の二つの大通りとなっている。地図上で二本の通りをなぞると楕円(だえん)の形につながり、この楕円(だえん)の内側がかつての「城壁内」だったことが分かる。

 多くの観光客でにぎわう外灘(ワイタン)にも近く、楕円(だえん)の外側には高層マンションがずらりと並ぶ。だが、大通りから細い路地を一歩中に入ると景色は一変する。

 「老房子(ラオファンツー)」と呼ばれる低層の古い家々が軒を連ね、曲がりくねった小道が縦横無尽に伸びる。軒先には洗濯物がなびき、家の外の共同台所では住民たちがおしゃべりしながらにぎやかに鍋を振って食事を作る。その足元では、住民たちが飼っているのか、犬や猫たちがくつろいでいる。高層の建物がないので、とにかく空が広い。

 そんな風景が好きで、旧城壁内の住宅地を歩いて巡るのが、上海暮らしの休日の楽しみの一つになっていた。

立ち退き奨励金670万円

 しかし、今年2月。久しぶりに中華路から一歩入ってみると、そこには異様な静寂が広がっていた。

 家々の玄関や窓はコンクリー…

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