ひきこもり、善意でも「問題外」な支援とは 失敗もとに

下地毅
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 社会福祉法人一麦会(和歌山市岩橋)の理事長・山本耕平さん(66)が「ひきこもりソーシャルワーク」を出版した。「ひきこもり」は「解決」すべき問題なのか。その視点から支援のあり方を、根底から問う。

 和歌山市の精神衛生相談員を2003年まで務めたあと、いろいろな大学で教えて今は佛教大学教授の山本さんは、ひきこもりを「ひとつの生き方」と定義する。「社会に適応するひとつの形」だから、無理やり引っぱりだしたり就職させたりすることは、ひきこもりを生きる人の生存権の侵害であり尊厳の毀損(きそん)となる。

 ひきこもりを選ばせたものを、山本さんは「競争を強いる社会」と指摘する。この社会は、「勝者」と「敗者」をつくって後者を学校・職場・地域から排除することで成り立っている、と著書で説く。それは、いずれは人間すべてを排除する社会でもある。

 したがって、この無残な社会を拒んだ生き方へのソーシャルワークには、「その人が選んだ人生をどう支えるか」「彼らを大切にし、彼らの人生を大切にする」という哲学が欠かせない。たとえ「善意」であっても「こんな人生を歩みなさい」と迫ることは問題外なのだ、と訴える。

ソーシャルワーク たくさんの失敗もとに

 本書のウリは第5章「ひきこもりソーシャルワークの方法」。たくさんの失敗をしてきたと振りかえる山本さんが、長年の実践から紡ぎだした「方法」をていねいに案内している。ここでのキーワードは「協同的関係性」。支える側と支えられる側ではなく、ともに社会や人生を変えて築いていこうという関係を指す。

 誰も他人の人生を背負うことはできない以上、どこかで割り切らなければ「支える側」はつぶれかねないのではないか――。こうした疑問に、山本さんは「協同的関係性は割り切れない」と答える。「適切な距離の取り方」を教える福祉教育も「薄っぺらい」と批判する。

 「ソーシャルワークで大事なことは『ゆらぎ』です。自分が何に苦しんでいるのか、自分のやり方はよかったのかを職場でどれだけ民主的な議論ができるか。徹底的な議論がソーシャルワークの質を高めていく」

 目ざす社会を「マイノリティを脱落させない、誰もが緩やかに生きることが可能となる社会」と書いて山本さんは本書の筆をおく。

 「ひきこもりソーシャルワーク―生きる場と関係の創出」(かもがわ出版)は税込み2420円。(下地毅)