災害時の情報収集にSNS活用の動き 埼玉

宮脇稜平
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 【埼玉】多くの人が日常的に使うLINEやツイッターなどのSNSを災害発生時の対応に生かそうと、自治体がAIなどを活用して市民の投稿から情報収集する動きが広がっている。幅広い情報が集まる一方で、正確さの判断や投稿に伴う危険などの課題もある。(宮脇稜平)

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 「緊急車両出動」「停電」……。埼玉県川口市役所5階の危機管理課にある大型モニターに映し出されているのは、県内の事故や火災に関するツイートだ。JX通信社が提供するサービス「ファストアラート」で、AIがツイッターの文章や画像を分析し、関連する投稿をまとめて表示する。市は2020年度に導入した。

 職員は適宜モニターを確認して異変がないかを確認し、消防から通報連絡があった際は、その内容を補完する役割を担う。「技術は日々進化している。SNSは有効な情報収集手段の一つ」と担当者は期待する。

 県は総務省主導の3年間の社会実験を経て、昨年8月、NECなどが手がけるAIのSNS分析システム「高度自然言語処理プラットフォーム」を導入した。県によると、AIが拾ったツイッターの投稿は、市町村からの災害に関する報告をまとめる既存のシステムを補足する材料にするという。

 NECによると、「炎が見えた」といった投稿でも、AIは他の情報と組み合わせて火災情報だと判断できるという。投稿数の多い場所を地図上に落とし込み、広い地域の被災状況をつかんで支援の優先順位を付けられる利点もあるとしている。

 特定のテーマをまとめて検索、表示できる機能のハッシュタグ付きの投稿の呼びかけを2014年に始めた和光市。当初は「#和光市災害」がついた投稿から市が災害情報を得る目的だったが、市は数年で、避難経路や被災状況などハッシュタグを検索した住民が必要な情報を得られる「共助の場」としてSNS空間を使う方針に変えた。

 14年の導入直後のゲリラ豪雨などで住民から情報を集める利点を感じた一方、数が多く把握しきれない難しさも徐々にわかったからだという。毎年6月の防災訓練消防団員に積極的に投稿してもらうなどして、「収集より共有」を行っているという。

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 災害時のSNS活用には課題もある。

 冠水や火災などは住民の危険が伴うため、自治体側からの積極的な投稿の呼びかけは難しい。川口市の担当者はツイッターの添付写真などは貴重な情報だとしつつ、「危険なところに行って写真を撮ってほしいとは言えない」と話す。

 SNS上に広がるデマ情報の見極めも重要だ。県が導入したシステムでは、多数派の投稿との比較などから、AIがデマの疑いのある情報を検知。正しいと思われる投稿との両方を示し、真偽を判断できる。県によると、デマとみられる投稿に注意を促すツイートを県が発信することも検討しているという。

 災害対応に詳しい東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授は、自治体が信頼性が担保された情報を提供する手段としてSNSを活用することは有効だとする一方、SNSから有益な情報を得る難しさを「砂金を見つけるようなもの」と表現。「やみくもに情報を集めるのではなく、市民からの電話など既存の情報源も含めて優先順位を考えるべきだ」と指摘する。