樹齢200年の桜 「治療」経て本来の色へ

杉山匡史
[PR]

 一般公開している国の名勝・櫻井(さくらい)家の日本庭園島根県奥出雲町上阿井)で、樹齢200年といわれる1本のヤマザクラが池のほとりで今年も淡い桃色の花を咲かせている。根元の土壌を自然の姿に改良する「治療」で生気が戻り始め、昨年からは当主がかつて愛(め)でて楽しんだ本来の濃い色に近づいているという。

 櫻井家は戦国武将・塙(ばん)団右衛門直之の末裔(まつえい)。後にたたら製鉄を営み、松江藩の鉄師頭取を務めた。櫻井家住宅は国重要文化財に指定されている。

 庭園は、7代藩主で「大名茶人」として知られる松平治郷(はるさと)(不昧(ふまい))の1803(享和3)年の「お成り」の際、造営された。岩肌を流れる滝は不昧が「岩浪(がんろう)」と名付け、水面に突き出るような茶室も備わっている。ヤマザクラは、その間に根を下ろしている。

 今回の「治療」は、庭園で約10年前から樹木の再生に携わっている倉吉市米田町の福楽善康(ふくらよしやす)さん(74)に、13代当主・櫻井尚さん(98)が「また赤い花を見てみたい」とつぶやいたことがきっかけだ。それまでは毎年、白っぽい花を付けていたという。

 福楽さんは長年、山陰両県をはじめ、世界遺産仁和寺京都市)の松や日光東照宮栃木県日光市)の松と梅など全国約2千カ所で1万本を超える古木などを土壌改良によって再生させた実績がある。

 櫻井家のヤマザクラを見ると、全体が衰弱したようで白くて生気を感じなかった。根元の土も硬くなっていて、「酸欠状態」とわかった。いつ枯れても不思議ではなかった。

 そこで元気な自然の状態に戻すため、根元の土を軟らかくしてすき間を作り、水分や養分を吸収させる効果がある有機物が主成分の液肥を注入。樹木が本来持つ再生力を高めていった。

 すると昨春、前年までと違って花びらの桃色が濃くなり出した。咲き終えた後に茂った葉も青々としていた。櫻井さんは、その姿をとても喜んだという。

 今年は昨年の4月3日よりも早く、3月下旬から咲き始めた。大雪で幾つかの枝は折れたが、花は昨年よりも良い。庭園外にある周囲のヤマザクラとは色合いが違うといい、福楽さんは「今年の花は昨年よりも大きくて輝いている。将来は不明だが生命力のすごさを感じる」と話す。

 14代の長男の妻紀子(のりこ)さん(68)は「ずっと白かったので、今が本来の色と聞いて驚いていた。四季で違う庭園を楽しんでほしい」と話した。

 開園は午前9時~午後4時半。入園料は住宅・庭園セットで大人400円、高校・大学生300円、小・中学生200円。月曜休み。問い合わせは櫻井家の所蔵品などを展示している隣接する歴史資料館の可部屋(かべや)集成館(0854・56・0800)へ。(杉山匡史)