インスタ映えスポットも 京都で春の文化財特別公開

久保智祥
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 春の京都非公開文化財特別公開京都市内の寺社などで開催されています。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4~5月(前期)と6月(後期)に期間を分散し、14カ所が公開されます。会場では検温などの感染防止策もとられます。いにしえから、人々の祈りを受け止めてきた寺社を心静かにめぐりませんか。(久保智祥)

拡大する写真・図版雙林寺の薬師如来坐像。量感豊かな表現が安定感と迫力を感じさせる=京都市東山区、筋野健太撮影

雙林寺 薬師如来坐像 最澄が願った平穏

 祇園の円山公園にほど近い雙林寺(そうりんじ)は、天台宗の宗祖・伝教大師(でんぎょうだいし)最澄の創建と伝わる。最澄が唐から請来(しょうらい)し桓武天皇に献上した密教経疏と護摩の器具を納めるため天皇が東山山麓(さんろく)に造営した伽藍が寺の起こりで、日本初の護摩祈禱(きとう)道場だという。

 その本尊としてまつられているのが薬師如来坐像(ざぞう)(国重要文化財)だ。カヤの一木造りで像高約85センチの等身像だが、量感豊かな体軀(たいく)の表現が迫力を感じさせる。「丸顔でお優しい表情ですが、唇を結ぶ凜(りん)としたほほえみに、衆生をなんとか守ってやりたいという思いを感じます」と野竿智敬(のざおちぎょう)住職(56)。

 比叡山で最澄が自ら刻みまつった薬師如来像を模刻した像が天台系寺院を中心に伝わり「天台薬師」と呼ばれる。最澄自刻という寺伝のある本像もその一つで、衣の部分には朱の彩色が残り、大きなひだと小さなひだが交互に繰り返す翻波式(ほんぱしき)衣文(えもん)をよく表すなど様式からも9世紀までさかのぼるとされる。

拡大する写真・図版雙林寺の薬師如来坐像。大きな手足も安定感と迫力を感じさせる=京都市東山区、筋野健太撮影

 長い年月の間、争乱などをかいくぐり守り伝えられてきた薬師如来。左手に薬壺(やっこ)をもつ姿に象徴されるその功徳は、病気の平癒や衣食を施すなど、現世利益をもたらす身近な仏様でもある。寺では毎月8日の縁日に護摩をたいているが、今年は伝教大師没後1200年の大遠忌(だいおんき)にあたることから、より多くの人にご縁を結んでもらおうと特別公開に参加した。

 野竿住職は「鎮護国家とすべての人が悟りを得られるようにと願われた伝教大師の思いを感じていただき、お薬師様に心を静めて一心に祈っていただきたい」と話す。(5月16日まで)

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 京都市東山区下河原鷲尾町527。市バス「祇園」下車徒歩10分、または京阪祇園四条駅から徒歩15分、阪急京都河原町駅から徒歩20分。

拡大する写真・図版八坂庚申堂のカラフルな「くくり猿」。左奥の本堂内部が公開される=京都市東山区、筋野健太撮影

八坂庚申堂 金剛寺 三猿とともに心静める

 八坂の塔すぐそばの八坂庚申堂(やさかこうしんどう)・金剛寺(こんごうじ)は、「くくり猿」と呼ばれる色とりどりのお守りが境内に無数につるされ、インスタ映えスポットとして人気だ。

 平安時代中期に、傾いた八坂の塔を法力で戻すなど霊験随一とされた僧侶の浄蔵貴所(じょうぞうきしょ)が建立した。中国から伝わった「庚申信仰」の霊場として崇敬されてきた。

 今回公開される本堂は江戸時代の再建。本尊の青面(しょうめん)金剛は秘仏だが、御前立(おまえだち)などを拝観できる。猿は青面金剛の使いで、本堂入り口には「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿もいる。

拡大する写真・図版八坂庚申堂の本堂内に置かれた三猿と「くくり猿」=京都市東山区、筋野健太撮影

 奥村真永(しんえい)住職(62)は「猿は動きが定まらない自らの心の象徴。手を合わせ祈ることで自らの心を定めることが大切です」。(5月16日まで)

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 京都市東山区金園町390。市バス「清水道」下車徒歩3分。

拡大する写真・図版平等寺の薬師如来立像。像高153センチの一木造り。Y字の浅い衣文やなで肩の特徴から11世紀初頭の作とみられる=京都市下京区

平等寺 因幡から京へ飛んできたお薬師さん

 京都市中心部にある因幡堂平等寺(いなばどうびょうどうじ)は、平安時代の1003年の創建と伝わり、東寺・西寺以後に平安京の中で建立された最初期の寺の一つだ。

 その創建の由来となったのが本尊の薬師如来立像(国重要文化財)だ。清凉寺(京都)の釈迦如来像、善光寺(長野)の阿弥陀如来像とともに「日本三如来」といわれる本像だが、縁起が面白い。

 それによると、天竺(インド)から竜宮を経由して因幡(今の鳥取)に漂着。平安貴族の橘行平(たちばなのゆきひら)が海から引き揚げた像が、因幡から京都の行平邸へ飛んできたと伝わるのだ。以来、「因幡薬師」と呼ばれ病気平癒、とくにがん封じのお薬師さんとして京の人々からあつい信仰を集めてきた。

 ふだんから病気平癒の祈禱(きとう)をする大釜諦順(たいじゅん)住職(66)は「病気の時は人はどうしても不安になるが、お参りしていただき、穏やかな気持ちで安心して過ごせるようにという仏様の願いを感じていただければ」と話す。(5月16日まで)

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 京都市下京区因幡堂町728。地下鉄四条駅、阪急烏丸駅下車徒歩5分。

開催期間と公開場所

【4月1日~5月5日】

上賀茂神社▽下鴨神社

【4月1日~5月16日】

雙林寺▽大雲院▽八坂庚申堂 金剛寺▽大行寺▽平等寺▽金光寺

【4月27日~5月6日】

知恩院大方丈・小方丈・方丈庭園

【4月29日~5月9日】

東寺五重塔

【5月1~9日】

梅辻家住宅

【6月1~20日】

常照寺▽大報恩寺(千本釈迦堂)

【6月12~20日】

北野天満宮

開催案内

春の特別公開

 【期間】《前期》4月1日~5月16日 《後期》6月1日~20日

 【拝観受付時間】

午前9時~午後4時

 ※東寺五重塔は午前8時~午後4時半

 ※公開期間・時間とも一部異なる会場あり

 【拝観料】

(1カ所につき)大人1千円、中高生500円

 ※東寺は大人800円、高校生700円、中学生以下500円

※朝日友の会会員は拝観料割引の特典あり

 【主催】

●京都古文化保存協会

 Tel 075・451・3313

 http://www.kobunka.com/別ウインドウで開きます

●公開寺社など

 【各種ご案内】

●朝日新聞デジタル特設ページ

 http://t.asahi.com/n1ir別ウインドウで開きます

新型コロナウイルスの感染拡大の状況により公開の延期・中止、または公開場所や日程・時間などが変更となる場合があります。来場の際は京都古文化保存協会のホームページ(http://www.kobunka.com/別ウインドウで開きます)や公式ツイッター(@kyoto_kobunka)で最新情報を確認してください。