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 【静岡】台風被害から復旧した直後に新型コロナによる観光客減少で再休業を余儀なくされていた「浜名湖遊覧船」(浜松市中区)が、3月にようやく全航路とも復活した。コロナ収束が見通せないなか、「ウィズコロナ」の時代に合った観光の形を求め、新たな施設や方策を打ち出している。

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 浜名湖の北西側に位置する「みっかび瀬戸港」(浜松市北区三ケ日町)。舘山寺エリアの「フラワーパーク港」を出発し、約30分かけて湖面を渡ってきた明るい色の船体がゆっくりと入って来た。浜名湖を横切るこの航路は、全国に深刻な被害をもたらした2018年10月の台風24号で桟橋が壊れるなどし、約2年2カ月にわたり止まっていた。昨年12月にようやく復活したものの、今年1月、新型コロナで首都圏などに再び緊急事態宣言が出されたことで、再び休業。全航路の営業が再開されたのは、3月6日のことだ。

 小野晃司社長は「これからの時代は団体客は期待できない。近場を巡る『マイクロツーリズム』や仕事と観光を融合した『ワーケーション』などがキーワード。しっかり対応していきたい」と話す。

 瀬戸港は約3千万円をかけて桟橋を造り直したほか、窓ガラスが割れるなどして使えなくなった遊覧船乗り場の建物も造り直した。延べ床面積109平方メートルの建物は黒と黄色を基調とした直線的な外観で、待合室やトイレのほか展望デッキを備える。「地元の店を利用してほしい」との思いから、施設内に飲食店や土産物店はあえて設けていない。

 5月に向けて、建物横にオートキャンプ場も整備する予定で、建物外から水や電気を利用できる設備もついている。旅先で休暇をとりながらリモートワークをする「ワーケーション」に対応するため、インターネット環境を整備した建物も整備中だ。

 瀬戸港に着いた船からは自転車を携えて降りてくる乗客もみられた。名古屋市から来たという大学1年生の男性4人は浜名湖を半周ほど走り、かんざんじ港から乗船したという。「浜名湖を1周するのはさすがにきつい。舘山寺温泉にはおしゃれな飲食店や土産物屋がたくさんあって楽しめました」と話した。

 同遊覧船は通常運航に加え、「近しい人で貸し切り船」も提案している。3月中旬にはさっそく浜松市立三ケ日中学の3年生約100人が利用。コロナ禍で修学旅行が中止となり、「子どもたちに思い出を」と考えた末のイベントだという。

 猪鼻湖の奥深くまで入り、湖上から中学の校舎や町並みを眺めることができたのも貸し切りならではの特典だ。県立三ケ日青年の家の職員らがモーターボート2隻で並走し、校旗や応援旗を振って卒業を祝ってくれるサプライズもあった。水谷良治校長は「何とか子どもたちの思い出を作ってやりたかった。貸し切りにすることで保護者の理解も得られ、心に残る催しになりました」と話した。

 晴天に恵まれた3月末の平日、フラワーパーク港から出る30分周遊コースに乗ってみた。150人乗りの「ハイビスカス」に乗客は50人ほどだった。船上に出るとまだ少し風が冷たいが、寒いというほどではない。乗客からは「案外広い湖なんだね」との声が漏れる。

 山々は新緑。山桜か、所々にピンクの花が映える。遠くにロープウェーが動いている。東名高速の浜名湖橋をくぐる時は、間近に橋が迫り、子どもたちが歓声を上げていた。

 浜松市動物園やはままつフラワーパーク、舘山寺温泉など浜名湖周辺には多くの名所やレジャースポットがある。小野社長は「遊覧船と路線バスを使って車がなくても様々な観光を楽しめるのが利点。アウトドア施設の観光はウィズコロナの時代に合っており、観光振興で地域活性化に貢献していきたい」と話している。(菅尾保)

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 〈浜名湖遊覧船〉 1907(明治40)年、浜名湖の水上交通を担う浜名湖巡航船として設立。浜名湖観光汽船を経て、77(昭和52)年に浜名湖遊覧船に。現在、150人乗りと250人乗りの船2隻で、湖内を周遊する「舘山寺航路」と湖を横切る「瀬戸航路」を運航している。どちらの航路も大人1千円、子ども500円。乗り放題は大人1800円、子ども900円(いずれも税込み)。

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