第1回返品されたブルーチーズの山 新しい英国、夢見てたのに

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ダービーシャー=和気真也、ロンドン=国末憲人
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誤算 EU離脱後の英国(上)

 英国が昨年末、欧州連合(EU)から完全に離脱した。それから3カ月。EUとの新たな貿易ルールを何とか決め、未来に向けて「新しい英国」の時代が幕を開けた――はずだったが、思わぬ事態に見舞われている。何が起きているのか。

英国のEU離脱

英国は1973年にEU(当時はEC)に加盟しましたが、2020年1月末に離脱しました。キャメロン政権によって16年6月に英国で実施された国民投票では国論を二分した末に、離脱支持(51.9%)が残留支持(48.1%)を上回りました。移民の増加や、貿易ルールなどの政策でEUと足並みをそろえることへの根強い不満、英国内の中央と地方の格差に対する政治不信が離脱支持に向かわせたとされます。拡大を続けてきたEUからの加盟国脱退は初めてです。

 英国中部ダービーシャーの緑豊かな農場で、目の前に積まれた返品の山に、農家のロバート・ゴスリングさん(58)は頭を抱えた。英特産のブルーチーズ「スティルトンチーズ」のメーカーも経営する。フランスイタリア向けに発送した詰め合わせ商品40箱が、通関を通らず、すべて戻ってきたのは1月のことだ。

 英国がEUを完全離脱し、貿易のルールが変わった。以前は不要だった検疫手続きが発生したため、大小にかかわらず商品が国境を越えるたびに180ポンド(約2万7千円)の追加費用がかかるとわかった。「1箱30ポンドのチーズの詰め合わせにも180ポンドの証書が必要と言われた。馬鹿げている」

「残留が正解だったのかも」

 商売は苦境にある。コロナ禍で納入先の飲食店や小売店が休業になり、売上高の4分の3が消えた。欧州向けネット通販は頼みの綱だったが、結局、1月以降はフランスイタリアなどに商品は出せていない。

 「EU離脱でこんなことになるとは、誰も予想できなかった」とため息をつくゴスリングさん。実は「ブレグジッター」と呼ばれる英国のEU離脱(ブレグジット)の賛成派だった。

 官僚的だと指摘されるEUに…

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連載誤算 EU離脱後の英国(全3回)

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