世界的政治家たちと武器ビジネス 映画が教えるその関係

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荒ちひろ
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 国際的な武器取引の実態を描いたドキュメンタリー映画「シャドー・ディール 武器ビジネスの闇」が公開されている。原作は、南アフリカ出身で元同国会議員のアンドルー・ファインスタイン氏の著書「武器ビジネス マネーと戦争の『最前線』」(2011年、日本語版は15年)。同氏とヨハン・グリモンプレ監督が共同で脚本を書き、約5年をかけて16年に映画化した。今回、日本語字幕版が公開された。

拡大する写真・図版ドキュメンタリー映画「シャドー・ディール 武器ビジネスの闇」の一場面=(C)Shadow World Productions, LLC

 映画では、武器取引に関連する汚職事件を調べた検察官やジャーナリスト、欧米の元軍人などの告発者、軍事産業の関係者らが、武器ビジネスと腐敗の構造について、カメラを前に次々と証言する。ファインスタイン氏も証言者の一人として登場し、自らの人生を変えた南アフリカの武器取引をめぐる汚職について語る。

 こうした証言インタビューと、公聴会やニュースなどの記録映像から浮かび上がるのは、英国のサッチャー元首相やブレア元首相、米国のレーガン元大統領やブッシュ元大統領など、誰もが目にしたことのあるような世界的な政治指導者らと武器ビジネスとの関係だ。グリモンプレ監督は、「武器取引とは、決して闇世界でこっそりと行われているのではなく、むしろ誰もが知っているような政治エリートたちが堂々と行っていることだ」と指摘する。

拡大する写真・図版談笑するブッシュ元米大統領(左)とサウジアラビアのバンダル王子=(C)Shadow World Productions, LLC

 一方で、2008年にイラクで「我々は自由と平和を求めている」と語った当時のブッシュ米大統領に靴を投げつけたイラク人記者や、内戦を経験した中米エルサルバドルの平和活動家など、武器ビジネスがもたらす「負の影響」の側にある人々の声も盛り込まれる。家族が解放を求めて泣き叫ぶ中、頭に袋をかぶせられて連行される現地の人々。幼い女の子が平和を求める歌を口ずさんだ直後、爆発音が響く内戦下のシリア――。空爆などの恐怖にさらされる人々の視点から、多くの兵器が市民に向けて使われる、武器ビジネスの行き着く先が描かれる。

監督「軍需産業が紛争引き起こす」

 「シャドー・ディール 武器ビジネスの闇」を監督したヨハン・グリモンプレ氏にオンラインでインタビューした。

 ――オリジナルの原作(英語版)は、2千を超える脚注を含め、約700ページにものぼる大作です。映画化にあたって注力したのはどんなことでしたか?

 約90分の映画にするには、テーマを抽出しなくてはなりませんでした。その一つは、軍需産業が利益を生み出すために戦争という火に油を注いでいるということ。「安全保障産業(security industry)」なんて言うけれど、実際には紛争を引き起こしている。私とアンドルー(ファインスタイン氏)は「非安全保障産業(insecurity industry)」と呼んでいます。

拡大する写真・図版オンラインインタビューにこたえるヨハン・グリモンプレ監督

 もう一つは、武器取引とは、決して闇世界でこっそりと行われているのでないということです。むしろ、誰もが知っているような政治エリートたちが堂々と行っている。軍事企業によるロビー活動は合法で、実際のところ合法的な賄賂のようなものです。これこそが武器取引の構造です。

 ――インタビューの中には、実際に国際的な取引に関わってきたという武器商人も証言者の一人として登場します。

 彼はある意味、特徴的な人物でした。

 闇取引の秘密や、どうやって…

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