有言実行、戦略的コラボ パリとミラノで日本ブランドは

編集委員・後藤洋平、神宮桃子
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 年明けから3月にかけて開催された2021年秋冬のパリとミラノのファッションウィークには、日本ブランドも多数参加した。コロナ禍のため動画での発表形式となったが、戦略的な創造や協業、新顔の参入など、それぞれの存在感を示そうと試みていた。

 1月のパリ・メンズでは6日間の期間中に約70のブランドが新作を発表し、うち10ブランドが日本勢だった。アジアではもちろん、欧州圏外の国を見渡しても突出した参加数が続く。

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得意のスニーカーとモデルを並べて見せたメゾンミハラヤスヒロ=ブランドが制作した動画から

 なかでも巧妙だったのは、1996年に革靴をメインとしたシューズブランドとして始まり、99年からウェアラインを展開するメゾンミハラヤスヒロ。解体・再構築したミリタリー調の服や、得意のスニーカーを並べて見せた。

 独自性が目を引くスニーカーのソールは粘土でかたどったもの。4年前から作り続けており、国内外で人気が広がる。スニーカー市場はナイキとアディダスの2強時代が続いているが、デザイナーの三原康裕は以前から「スポーツブランドに機能性で対抗しても、開発費が桁違いで独立系の我々に勝機はない。アナログなやり方で道をひらく」と語っていた。そのソールを用いて今シーズンも、大手ブランドの人気スニーカーを連想させる新作を投下した。有言実行である。

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ミハラヤスヒロ

 ブランド設立15年のホワイトマウンテニアリングは、モデルたちがスキーやスノーボードをする動画を制作。同系色のチェックを組み合わせた定番のコーディネートとともに、アウトドアブランドとしての原点に立ち返った。これまでアディダスなど数々の協業で話題になったが、今回初めてミズノとの協業スニーカーを発表した。

 デザイナーの相澤陽介はJリーグ・コンサドーレ札幌のクリエーティブディレクターとしてユニホームを手がけるようになったが、その供給先も今年からミズノ。

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ホワイトマウンテニアリング

 ヨシオクボは木工家具の工場を舞台にした動画で新作を発表した。この数年は海外のマーケットを意識してか、和のテイストが強まっている。今季は作務衣(さむえ)のようなジャケットのセットアップが印象的だ。ブランドによると「日本文化の基層となる美的理念の一つである『幽玄』をテーマにした」という。

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ヨシオクボ

 パリ・メンズの公式ランウェースケジュールに初参加したキディルは、米アーティスト、ジェシー・ドラクスラーと協業し、アートと融合したパンクスタイルを披露。大胆な筆致で描かれた人の顔のモチーフなどを、シャツやコート、パンツなどにとり入れた。デザイナーの末安弘明は「新型コロナウイルスで世界中が元気を失っているが、こういう状況だからこそ強い服を作らないといけない」と話した。作品はモノトーンが目立つが、「気分が沈むようなものではなく、白黒だけどポップにしたかった」。

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キディルの2021年秋冬コレクション=ブランド提供

 これまでパリ・メンズに参加してきたタカヒロミヤシタザソロイスト.は、大手ブランドがひしめくパリのレディース公式ランウェーに挑み、モノトーンにこだわったパンキッシュな装いを披露した。

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タカヒロミヤシタザソロイスト.

 ミラノ・メンズで発表したジエダは70年代の米国への憧れを服に落とし込んだ。古着風のセーターには馬と星条旗をあしらい、ブーツカットのデニムと合わせた。

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ジエダ

 世界に誇る日本の大御所の精神が受け継がれている。そう受け取れたコレクションもあった。ヨウジヤマモト出身でパリ・レディースに参加したウジョーが発表したのは、師が得意とする肉厚生地で大きな襟のアウター。一方、柔らかな中間色づかいには独自のクリエーションを感じる。

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ウジョー

 素材に対する並々ならぬこだわりが伝わったのは、イッセイミヤケ出身でパリ・メンズに参加したターク。一枚の生地が、フライトジャケット用のナイロンから、徐々にウールに変わっていく。

 デザイナーの森川拓野(たくや)は「夢の中で見た世界、現実とは異なる違和感を毎日描き出し、それを現実化させる仕事をした」という。素材に対して妥協を許さず追究を重ねる三宅一生の教えが、間違いなく生きている。(編集委員・後藤洋平、神宮桃子)

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ターク