三島由紀夫の埋もれた超短編作品「恋文」 文芸誌掲載へ

山崎聡
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 作家の三島由紀夫(1925~70)が、新進作家として歩み出していた20代半ばに「恋文」と題した掌編小説を残していたことがわかった。全集や単行本には未収録で、専門家にも存在を知られていなかった。7日発売の文芸誌「新潮」に掲載される。

 「恋文」は、宴会に出ていた男がハンカチを取りだそうとして、知らないうちに入っていた手紙を見つける場面で始まる。「明日五時PX前でお待ちします。X子」。匿名の恋文に隠された秘密が米占領下の日本の状況を暗示するような短い物語だ。

 49年10月30日付の朝日新聞大阪本社版と西部本社版に「400字小説」と題した特集の一編として掲載され、そのまま埋もれていた。戦後の新聞文芸欄を調べている大阪大学の斎藤理生(まさお)教授(日本近代文学)が今年2月に確認した。

 掲載当時、三島は24歳。前年の48年9月に大蔵省を辞め作家専業となり、49年7月には出世作となった書き下ろし長編「仮面の告白」を発表していた。

 斎藤教授によると、作中の「PX」はPost Exchangeの略で、戦後の米占領下に存在した進駐軍向けの売店を指す。斎藤教授は「占領下に置かれた日本と、一家の状況が二重写しになっていて、若き三島の作家としての高い力量がうかがえる」と話す。(山崎聡)