五輪の聖火、愛知の豊田へ 三重に引き継ぐ

本井宏人 床並浩一 上山浩也 土井良典
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 東京五輪聖火リレーは6日、愛知県内の最終日を迎えた。豊橋市や岡崎市など8市で約120人のランナーがエントリー。明日への希望や郷土への誇りを持って、ゴール地点の豊田市へ。7日には三重県に引き継がれる。

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 6日の第1走者は、冬季五輪フィギュアスケートで2大会連続入賞を果たした鈴木明子さん(36)。故郷の愛知県豊橋市であった出発式で、トーチに分けられたばかりの聖火を地元の保育園児20人と一緒に運んだ。

 鈴木さんは18歳のときに摂食障害になり、1年間試合に出られなかった。「周囲の方に支えられて壁を乗り越えられた。聖火ランナーを務めることで恩返ししたい」と走者を志願した。

 出発式会場から沿道に出て豊橋駅前を走った。「よく知った道なのに、沿道の方の笑顔が見えて新しい景色に見えた。育ったまちにも恩返しができたと思う。五輪がたくさんの方たちに支えられていることを改めて感じた」と話した。(本井宏人)

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 豊橋駅前の大通りで路面電車と並走した清須市の大橋秀旭さん(33)。前夜は緊張でよく眠れなかったというが、家族からの「パパ、頑張ってね」の声援に加え、走者の思いがつながれてきたトーチの重みを力に変えた。「重要な役割を果たすことができました。一生の思い出になります」

 3人の娘の父親。片耳の聴覚に障害がある次女花音(かのん)さん(8)は特別支援学校ではなく地元の小学校に通う。大橋さんは「ハンディがある人もない人も、ともに暮らせる地域」という。走者を務めることで「3人の娘が五輪やパラリンピックに興味を持ち、ハンディがあっても活躍する人が大勢いることやたくさんの人に支えられていることを学んでほしい」と話す。

 花音さんは新学期にサッカーを始める。沿道で声援を送ってくれた人たちのように、娘たちの成長を見守っていくつもりだ。(床並浩一)

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 愛知県内の初日だった5日は、ノーベル物理学賞を2014年に受賞した名古屋大学教授の天野浩さん(60)が最後のランナーとして名古屋市内を走った。

 恩師で、ノーベル賞を共同受賞した赤崎勇さんが1日に92歳で亡くなったばかり。「先生は国際会議が大好きで、座長などをされていた。おもてなしの心で、参加される世界の研究者たちに楽しんでいただけるようにとしていた。オリンピック(の開催)も先生は喜んでおられたと思う」

 葬儀にも駆けつけたといい、「先生には感謝の言葉しかない。ここまで辛抱強く見守ってくださって、本当にありがとうございました」と話した。(上山浩也)

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 半田市の半田運河では伝統の「ちんとろ舟」に乗って聖火が運ばれた。慣例にならって女人禁制としていた乗船者約30人について、市は五輪憲章の男女平等の理念に合わないとして変更。女性3人が乗船した。

 アイドルグループ「マジック・プリンス」の平野泰新(たいしん)さん(26)を聖火ランナーに迎えた舟は、にぎやかなおはやしとともに、ゆっくりと運河を航行した。ちんとろ舟は、4月の「ちんとろ祭り」で近くの住吉神社の池に浮かべられ、子どもの舞を奉納するなどして五穀豊穣(ほうじょう)を祈願するもの。

 祭りの運営責任者、榊原隆男さん(74)によると、女人禁制を明文化したものはないが、女性が乗らない状況が実態としてあった。観覧に来た地元の大学生加藤藍さん(20)は「五輪との兼ね合いで問題視されたが、男性限定という文化はあってもいい。祭りをこれからも守っていくことが何より大切」と話した。(土井良典)