「好きなことは仕事にするな」 姉が反乱、呪いは解けた

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若松真平
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 「お母さんはね、大学に行けなかったの。受験直前になって突然ダメだと反対されてしまって……。だから、あなたたちにはそんな思いをさせたくないの」

 幼いころ、イラストレーターの帆波りつさんと姉は、母からそんな話を聞かされ、勉強するように言われていた。

 育った九州の地方都市では、「女の子に勉強させて何になるんだ」「高卒で十分」といった考え方が根強かった。

 母はこうも言っていた。

 「真面目に勉強して、良い学校へ進学して、良い企業に就職するんだよ。いま頑張れば後から楽になるから」

 「良い人を見つけたら、すぐに結婚すればいいからね」

 同居していた祖母からは、よくこう言われていた。

 「本当に好きなことは、絶対に仕事にしちゃいけないよ。嫌いになっちゃうからね。趣味のままが一番」

 何度も繰り返し聞かされてきた、これらの言葉に疑問を感じたことはなかった。

 それが当たり前で、幸せになる方法だと思っていた。

唯一続いていた、絵を描くこと

 帆波さんは絵を描くことが好きだった。ただ、「絵だけが特別」とは思っていなかった。

 スイミング、バドミントン、空手、英会話、書道など、たくさんの習い事をして楽しかった。

 けれど、どれも長くは続かなかった。

 そんな中で唯一続いていたのが、絵を描くことだった。

 美術部に入っていた中学時代、顧問の教師から「高校は美術科を受験してみないか」と誘われたが、断った。

 絵を仕事にするなんてリスクが高すぎる。本気でそう思ったから。

 国立高専に進学してからも、将来のことを深く考える暇はなく、就職を機に地元を離れた。

 「事件」が起こったのは今から数年前。帰省していた時のことだった。

 姉の部屋から花瓶の割れる音…

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