「ウケる、泣ける」にご用心 子どもの本、プロの選び方

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松本紗知、佐藤啓介
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 子どもに本をプレゼントするとき、賢くなりそう、良い子に育ちそうなどと、「ためになる本」を選んでいませんか? 大切なのはもっと別のことだと、専門家は言います。朝日新聞の「子どもの本棚」のコーナーで、絵本・児童書の紹介を担当するその道のプロ4人に、本との向き合い方と、新年度のスタートに読みたい1冊を教えてもらいました。(松本紗知、佐藤啓介)

絵本評論家・作家 広松由希子さん

 コロナ禍が収まらないなかでの新生活の始まりに、不安な気持ちの方も多いのでは。そんな親子にこそ「おおきなキャンドル馬車にのせ」(たむらしげる作、偕成社)という絵本をすすめたいです。

 小人のニコさんとロボットのダダくんがキャンドルを運ぶのは、子どもたちを祝うケーキをみんなで作るため。夜になり、ケーキが完成するとお月さまが語りかけます。「ありがとう、うまれてきてくれたこどもたち、たくさんのともだちができてうれしいよ!」。今を生きている子どもたちを丸ごと祝福する、そんな喜びの時間を親子で過ごしてもらえたらと思います。

 大学生のころは文学や美術に関心があり、いくつかの出会いがあって、次第に絵本に携わる仕事がしたいという気持ちになりました。国語と美術の教科書の編集者、家庭文庫の主宰、「ちひろ美術館」の学芸員などを経て独立し、絵本の評論家や作家として活動しています。昨年には、東京都新宿区内に、国内外の色々な絵本と触れあえるスペースを設けた総菜カフェ「83gocco(ハチサンゴッコ)」も開きました。

 講演会などでは、「ウケると泣けるにご用心」などと伝えています。つい大人の目線でわかりやすく「ウケるもの、泣けるもの」を選んでしまう危うさが、子どもの本にはあるからです。よい絵本は、理解しやすいものばかりとは限りません。すぐには反応が見えなくても、子どもの心に種がまかれ、少しずつ大切な気づきを与えてくれる絵本もあります。「子どもの本棚」では、様々な色や形の種を届けられたらという思いで選んでいます。

 仕事を通じていろんな絵本を読むなかで、自分の新たなツボが刺激され、好きな絵本の対象が広がっていく体験をしてきました。子どもに絵本を選ぶ大人にも広い目で、自分の「好き」のツボを増やしてほしいし、子どもがくすぐったがる新たなツボを見つけるつもりで選んでほしいです。

 また1人の評論家としては、絵本作家たちが、この時代に何を感じ、今をともに生きている子どもたちに伝えようとしているのか、そうした思いを見過ごさないようにしたい。そんな気持ちで日々、新しく生まれる絵本と向き合っています。

 いいことばかりとは言えない今、子どもの想像力や、希望を持つ力を養う絵本の役割は、より大きくなっていると感じています。子どもたちには自分のペースでページをめくり、多様な世界を豊かに感じてほしいです。

ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん

 大学卒業後は出版社に勤め、営業担当として主に子どもの本を扱っていました。会社の同期だった妻と結婚し、子どもが生まれたのを機に2人で退職。妻の実家があった長野県松本市に、子どもの本の専門店「ちいさいおうち書店」を開きました。1980年のことで、昨年40周年を迎えました。漫画や流行の本だけでなく、その時々の年齢に合わせたふさわしい本を子どもたちにどうやって手渡すことができるか、考えながら仕事をしています。

 たとえばファンタジーを大人…

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