あの竹刀、外国選手対策だった 全空連強化委員長が辞任

竹園隆浩
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 空手の組手女子61キロ超級東京五輪代表に確定している植草歩選手(28)=JAL=にパワーハラスメント行為などで訴えられていた全日本空手道連盟(全空連)の香川政夫強化委員長が7日、辞任を発表した。

 「大変危険であり、全く認められるものではない」と全空連の倫理委員会が認定した竹刀を用いた稽古は、香川氏が外国選手対策として実施したものだった。

 現在の組手ルールはポイント制。重要なのは相手との距離感だ。長身で手足の長い選手が外国勢には多い。日本選手が相手の間合いに合わせると攻撃が届かず、防御でも「大丈夫」と見切った攻撃で失点してしまうことが多々ある。

 課題を克服する特別稽古に香川氏は竹刀を用いた。記者が見た練習の動画では、離れた間合いから回し蹴りなどの軌道で竹刀を振り、選手はそれをよけて懐に入る動きを繰り返していた。

 五輪採用が悲願だった空手界で、初採用された東京五輪のメダル獲得は「最重要課題」。だが、形と違って組手は外国勢の躍進が著しい。直近の2018年世界選手権のメダル数は男女個人10階級で金1、銀2、銅1。五輪は男女6階級だが、苦戦は必至だ。

 五輪の追加競技に決定した時、全空連幹部が漏らした。「1964年東京五輪で初採用された柔道と同じ。日本発祥で、空手は必ず勝つと国民は思うだろうが、現実は厳しい」。強化委員長として大会の結果に責任を負う香川氏には、五輪が迫るにつれ、これまで以上の重圧と責任感がのしかかったのは間違いない。

 欧州では同様の稽古が発泡スチロールの用具を使って、けがなく行われているという。香川氏はなぜ、竹刀だったのか。選手を負傷させた責任は免れない。世界の実情を知るはずの指導者が、安全面への配慮を欠いた事実が残念だ。(竹園隆浩)