これは本当の新橋じゃない(ちゃんこ料理店「井筒」店主の野村誠一郎さん)
野村さんは、いま54歳。父親が営む店を手伝うため高校時代から新橋に通い、35年以上になる。
東京都などに初めて緊急事態宣言が出された昨年4月、街から人が消えた。予約のキャンセルが相次ぎ、店を開けても客が来ない日も。当時取材に「別の国に来たみたい」と語った。
1年たって当時と比べれば人通りは増えつつあるが、コロナ前の水準にはほど遠い新橋の様子を見ながら、「別の街にいるみたい」と言葉をつないだ。
安心して足を運んでほしいと、カウンターにアクリル板を並べ、各席に消毒液を設置。店内の換気が十分かを確かめるために、二酸化炭素測定器も置いた。やれることは何でもやったが、客足には結びつかない。1日の売り上げは数万円で、昨春に借りた約1千万円を取り崩す日々だ。
今年1月に2回目の緊急事態宣言が出た後、一緒に店に立つ父親が「余力があるうちに店をたたもうか」とこぼしたことがある。迷わずに言った。「俺は続けるよ。昔から見てきた新橋が好きだから」(遠藤隆史)
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誰もが経験したことのない日々が続いています。様々な立場、場面の言葉を集めます。明日に向かうための「#コロナを生きる言葉集」。
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朝日新聞社会部