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 神奈川県三浦市特産の春キャベツが7日、東日本大震災で被災した宮城県南三陸町へ送られた。届け先は町の学校給食センター。夜明けとともに収穫したみずみずしいキャベツは9日、給食として調理され、小中7校の約880人に提供される。

 7日早朝、三浦市南東の南下浦町。房総半島の向こうから昇る朝日が、キャベツ畑を照らした。気温は9度。防寒着姿の地元農家、杉野幸雄さん(57)が1玉を手に取り、外側の葉をむく。「ばりばりっ」と弾力を感じさせる音が響き、葉の内に潜んでいた水が散った。

 「陽(ひ)が昇る前、気温が低いうちに取った方がシャキシャキで甘い」。収穫を始めてまず、8玉入りの箱を八つ作り終えた。「これは南三陸町へ送る分です」

 2011年3月11日。南三陸町を襲った津波は、八幡川沿いに立つ給食センターをのみ込んだ。「黒い壁が押し寄せたように見えた」。10人余の職員と一緒に高台へ避難した栄養教諭、高橋佳子さん(53)は、そう振り返る。

 ちょうど10年前の4月7日、杉野さんは震災支援で野菜を届け始めた。三浦市に住む南三陸町出身の友人が先導し、キャベツやダイコンのほか、菓子、ジュースなどを積んだトラックを駆った。朝に出て、到着したのは夕方。津波に流された町の光景に、思わず涙があふれた。

 12年4月、南三陸町は古い給食調理場を使って完全給食を再開した。その1年後、杉野さんの畑で取れた春キャベツが、その友人の縁で給食調理場へ届くようになった。18年春に新しい給食センターが建った後も、変わりなく続けられた。

 「とにかく甘くておいしい。素材の良さを味わうため、サラダにすることが多い」と高橋さん。今春最初のキャベツは太めの千切りにし、スープの具材にするという。

 これまで年に2回は杉野さんが自ら野菜を届けていたが、今春は農協の仕事が忙しく、断念した。「今日、7日が私にとっての震災10年。南三陸までトラックで行き、子どもたちの笑顔を見たかった」

 春キャベツの旬は3月から5月中旬。杉野さんはこの春、合わせて約600個を送る予定だ。(佐々木康之)

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