本木雅弘とコロナ禍「希林さんと裕也さんがいたら……」

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宮田裕介
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 今から約100年前のパンデミックスペイン風邪をテーマにしたドラマ「流行感冒」(BSプレミアム、10日夜9時)に、本木雅弘が主演する。演じるのは、目に見えぬ感染症の恐怖で人間不信に陥った小説家だ。本木は、現代の私たちがコロナ禍と向き合うには、義母の樹木希林さんが大切にしていた「調和」の考え方が大切だという。話を聞いた。

 ――今回のドラマに出演された決め手は何だったのでしょうか。

 まず、自分の事情をお話しさせていただいてもよろしいでしょうか。

 実は、昨年1月の終わりごろに大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の斎藤道三役を終えました。その後に世の中がコロナ一色に変わっていた。徐々に撮影も困難な状況になり、自分としては撮影の仕事を休んで、冬眠状態になろうと思って過ごしていました。そういうことが一通りあって、昨秋ごろに、(このドラマの)お話をいただきました。

 ――仕事をストップされていた理由は撮影の難しさ以外もあったのでしょうか。

 原点回帰といいますか、自分なりの次の入り口が見つかるまで次の仕事を控えておこうという心境でした。

 今でこそ「ニューノーマル」という言葉が当たり前になりましたが、コロナ禍後を生きていくための価値観や日常生活を再構築していかないといけない、コロナで日常生活を組み替え直さなきゃいけなくなりました。だから、とてもじゃないけれど、そのような状態では仕事がしにくかったし、今見つめるべきものは仕事じゃないのかも、と思ったんです。日々忙しく何事も上昇しようとすると、大切なことを見落としてしまいますから。

 自粛期間がありましたので、外国から帰ってきた子どもたちと自宅で過ごしながら、家族の絆を深めました。家族と時間を過ごす中で、親や夫の役割を上澄みだけをすくいとっていた部分があったんだなと思った。コロナでたまたま家族がぎゅっと密になり、改めて近しい人間との関係が大切だなと思った。

 ――仕事をしない焦りはありませんでしたか。

 自分はどちらかと言うと、スローペースで(仕事を)やるタイプ。焦りはありませんでした。迷惑をかけたくないし、コロナにかかりたくもないですし。(昨秋の)世の中が落ち着いてきたという状況以上にこの作品をやりたいという気持ちが大きかった。重要な作品になる、と思いました。

 タイトルの「流行感冒」は堅く、重たい印象もしますが、演出的には非常にささやかながらも大切な人間愛のストーリーです。マスク姿、感染の恐怖に心を乱し、人間同士の信頼が揺らぐ様子……。現代の誰もが一度は経験済みで、「わかる、わかる」と言ってくれると思う内容です。このドラマを見れば、目に見えぬ感染症におびえて大切なものを見過ごしてしまったり、必要以上に傷ついたり傷つけてしまったりしていることに素直になれるんじゃないのかな。今後の生活がもう少し風通しがきっとよくなるんじゃないかと思う。自分自身も、学ぶべき教訓をこのドラマを通して整理したい気持ちもありました。

 ――コロナ禍で気づきはありましたか。

 「この世このまま大調和」という言葉があります。

 あしきもの、例えば病気や感染症は、無くなればいいけれど、完全に消えないこともある。それとどう付き合っていくかが問われ、体の中に病気があったら、取り除こうとするものではなくて、どういう風に調和していくかが大事だと思っています。自分なりに調和を意識すると体が変わる。そういうことは、全てに言えるんじゃないか、と。

 樹木(希林)さんも、病気は消えるものじゃないし、どう付き合っていくかが大切だと言っていました。志賀直哉の作品では特に、「城の崎にて」が好きなんです。生と死は両極端なものではなく近しいものという気づきを与えてくれ、調和を感じます。

 もちろん、コロナで多くの方が亡くなっていますので、それは気の毒でしかありません。ドラマの中でも「死んでいい命なんか一つもなかった。何でもない日々を、これからの夢を当たり前に信じていたのに」というセリフがありますが、本当にそうだと思います。

 一方で、コロナ禍だからこそ気づけたことがあったはずです。困難な時の気づきは、大事にしたい。ささやかなドラマですが、かけがえのない日常といった宝物を見つめ直すきっかけになればという思いです。

 ――義父母の樹木希林さんと内田裕也さんの言葉は強いメッセージ性がありました。こんな時にどんな話をされるのか気になりました。

 少しおかしな言い方ですけど…

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