スマホに広がる「私」の世界 傍聴席の向こう側

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 桜舞い散る季節、朝日新聞社にも新入社員が入社してきた。これから全国の総局に配属され、記者のイロハをオン・ザ・ジョブトレーニングで学んでいくが、伝統的に事件取材から始めるのが定石だ。今回は、ネットで読まれる「事件記事」はどんなものか、そこから思うことを書いてみようと思う。

メディア空間考 三橋麻子(コンテンツエディター)

 朝日新聞デジタルには7年半続く「きょうも傍聴席にいます。」という連載がある。大変長行なので紙面には掲載していないが、デジタルでは長年人気がある。誰もが知る大事件から、万引き事件まで、全国の記者が気になる事件の裁判を傍聴して、法廷でのやりとりをリポートするものだ。

 現場で聞き込みなどの取材をし、真相に迫るのも事件取材だが、裁判所で検察や裁判官、そして被告本人の話を聞きながら、真相を追う裁判取材も事件報道だ。事件現場で取材を重ねても、テレビドラマなどと違って、容疑者に直接あって話を聞く、という機会はなかなかない。多くの場合、記者は法廷で初めて、被告本人の姿を見て、肉声を聞くことになる。

 この連載では、初公判、被告人質問や証人尋問論告求刑、判決、と裁判の流れにそって記事が構成される。

 なぜ、事件を起こしたのか。検察官や弁護士に問われて、被告が語り、多くの関係者も証言していく。読者も法廷にいるかのように事件の背景を考えられるよう、できるだけ丁寧にそのやりとりをつづっていく。

 発生した時点ではあまり報道されることもなかった、量刑の軽い事件が高い関心を呼ぶことも多い。普通の生活者がふとしたボタンのかけ違いから犯してしまった事件や、児童虐待介護殺人など家族間の事件は、常にたくさんの人に読まれている。

 たとえば、28歳から30年…

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