公民館で1人十数年 アコーディオン気づけば3500曲

松本行弘
[PR]

 公民館の研修室で一人、アコーディオンを演奏して十数年。愛知県碧南市の神谷肇さん(79)は10代からこの楽器に魅せられ、アマチュアで奏者を続けた名古屋アコーディオンクラブの元会長だ。アコーディオン人生を形に残したい。そう思って始めたカセットテープへの録音は約3500曲になるという。

 高浜市で3月8日昼前にあった「さわやか歌広場」。参加した約20人のため、神谷さんは20曲を伴奏した。8年前から続くこの市民教室は毎週1回、碧南でも同様の教室が月1回あり、コロナ禍の前には岩倉市へも出掛けていた。6年前からは地元で演奏教室も開く。7月で80歳。演奏の場はまだまだある。

 小学生のころ、自宅の近くにあった鉄工所から夜になるとアコーディオンの音が聞こえてきた。「仕事後にご主人が演奏していたんでしょうね。哀愁のある音色にひかれて、どうしてもほしくなった」。高価で買ってもらえなかった。中学卒業後に名古屋市内の金物問屋に勤め、18歳でようやく手に入れた。当時、約7万円。勤め先の近くにあったアコーディオン教室で休日に習い始め、3年後には人前で演奏できるようになった。

 バンドを結成し、福祉施設慰問やホテルでの宴会、フェリー船内ののど自慢など、求めがあれば休日や仕事後に出向いた。名古屋鉄道の保線管理などの仕事に変わり、夜の作業で「アコーディオンどころじゃない」という日もあった。それでも演奏活動を続け、横森良造さんやcobaさんら、著名なアコーディオン奏者との共演もした。

 楽しかった足跡を残したい思いが膨らんだ。2005年くらいから地元の新川公民館を週4日ほど予約。午後6時から、小さなカセットレコーダーで録音を始めた。懐メロ、演歌、ポップス、民謡などを黙々と演奏する。「熱を入れると1時間半で3曲くらいは録音できる」という。

 月に2度ほど録音の場に訪れて、神谷さんの伴奏で歌の練習をする刈谷市高橋光男さん(75)が、カセットテープからCDに録音し直した。1枚15曲ほどのCDは約230枚。パソコンを使わない神谷さんは、自分の写真が印刷されたCDを「宝物だ」と喜ぶ。

 「一人オーケストラで個性が出せる。同じ楽譜でも違う演奏になる。人がまねできないこともできる。それがアコーディオンの魅力」と語る。数年前から、ご当地ソングの詞を書いた人に作曲を頼まれるようになった。19年に作曲した「夢一途」が全国発売され、今年5月にも「白神山地」という曲が発売される予定という。公民館の録音では琴との共演も試みた。神谷さんの演奏活動は今も広がっている。(松本行弘)