中村壱太郎さんが大切にする祖父のネクタイ 存在感じて

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文・西本ゆか、写真・西畑志朗
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 歌舞伎役者の中村壱太郎さん(30)は公演初日と千秋楽、昨秋死去した祖父・坂田藤十郎さんのネクタイで楽屋入りします。「曽根崎心中」お初など、数々の名演を観客の記憶と記録に残した祖父の力を、その身に感じるからです。祖父との思い出からコロナ禍下での日々まで、熱い思いを語りました。

写真・図版
中村壱太郎さん=東京都中央区

 祖父の坂田藤十郎は、とてもおしゃれな人でした。冬はモノトーンのコートの下に明るい色のセーターを洒脱(しゃだつ)に着こなし、帽子できめて。寝室のクローゼットに収めた多くの服を管理していたのは祖母(扇千景さん)です。政界を引退してからはほぼ家におり、祖父と行動を共にしていましたから、季節ごとの衣装を把握し、整理して。昨年11月に祖父が亡くなると、たくさんあるネクタイを僕ら親族とお弟子さんに分けてくれました。僕も祖父らしい明るいブルーや合わせやすい柄物、ベーシックな黒系など、数本を選んで頂きました。

 その1本を、初めて締めたのは翌月に開幕した京都・南座の顔見世興行。初日と千秋楽はスーツでの楽屋入りが慣習なんです。京都で生まれた祖父にとり南座の顔見世は特別な公演で、亡くなる前年にも出演し、最後の舞台になりました。そんな思いで締めたのですが、楽屋に入ると、祖父の力をもらったようで、不思議と心が落ち着いて。それ以来、公演初日と千秋楽に祖父のネクタイを締めるのが僕の習慣になりました。

 祖父が演じ続けた「曽根崎心…

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