なじみ客が「70万円おろしたい」 19歳職員の違和感

黒田早織
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 3月22日、窓口の営業が終わる午後3時の直前だった。

 「70万円おろしたい」

 焦った様子で、飯能信用金庫狭山ケ丘支店(埼玉県所沢市)に駆け込んできた80代女性は、そう言った。

 普段からなじみの客。対応した石原沙樹さん(19)は、女性がひと月の生活費30万円ほどを一度にまとめて引き出していく人だと知っていた。その倍以上の金額を慌てて引き出そうとするのは、どう考えても不自然だ。

 理由を聞くと、「息子から大事な書類をなくしたので100万円用意してほしいと電話が来た」と言ったり、「孫の結婚資金に使う」と言ったり。だが、その後の話もつじつまが合わず、説明も二転三転した。

 「詐欺に違いない」

 石原さんは上司の近藤和彦さん(41)に相談し、警察に通報。駆けつけた警察官2人とともに女性を説得した。

 女性には「なぜ今回だけ疑うの?」「警察なんか呼んで大ごとにして」と怒られたが、その後に息子と連絡がついて詐欺だとわかった。

 石原さんは飯能信用金庫に昨年入社し、狭山ケ丘支店で働く。研修などで言われていたのが「少しでも気になる点があれば上司に相談するように」ということだった。

 石原さんは「お客様の大切なお金を守れてよかった」と喜んだ。石原さんらに感謝状を贈った赤星誠・所沢署長は「入社から1年でここまで目が養われるとは」とたたえた。

 近藤さんは「地元の人との距離が近い」信用金庫の特性が生きたと話す。「地域密着が我々の強み。これからも形式的なやりとりにとどまらず、お客様を守っていきたい」(黒田早織)