「発言者に立証責任を」 前半国会をファクトチェック

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南彰
【動画】記者サロン「通常国会をファクトチェック」
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 政治家の発言などの真偽を検証する「ファクトチェック」。朝日新聞社は4日、記者サロン「コロナ下の国会 ファクトチェック」を開いた。日本でファクトチェックを推進するNPO「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」副理事長の立岩陽一郎氏と法政大教授の上西充子氏と一緒に、新年度予算案の審議を中心とする前半国会の議論を検証した。

 今国会では、菅義偉首相新型コロナウイルスの対応や、長男が勤める「東北新社」などによる総務省幹部の接待問題などで60回以上の謝罪を重ねるなど低姿勢が目立つ。上西氏は「動かぬ証拠を突きつけられてから謝る感じ。答弁から逃げる傾向が見えている」と分析。首相が「結果として申し訳ない」と答弁していることも「因果関係をわざと否定する言い方だ」と指摘した。立岩氏は「安倍政権の後半から顕著だが、霞が関の官僚の答弁がいい加減になっている。極めて危ない状況」と語った。

 イベントでは、発言を「正確」から「虚偽」まで9段階で評価するFIJの判定基準を使用。東北新社による接待や外資規制違反の問題で、官僚が頻発した「記憶にない」という答弁を検証した。

 立岩氏は「米国(のファクトチェック)では『発言者に立証責任がある』ため、(立証できなければ)『うそ』『フェイク』となる。日本ではそこまでの文化がないから、ファクトチェックする側が頑張って事実かどうかを認定する感じだ」と日米の差を指摘した。とくに外資規制の問題で、報告をめぐって同社と総務省の言い分が食い違っている点について「重要な法令違反の事実を伝えたと会社側が言っているのに、『記憶にない』というのは外形的事実からするとあり得ないと思うが、日本では『根拠不明』となる」と判定した。

 上西氏は「発言者に立証責任があるというのは非常に大事な考えだ。役人は記憶ではなく記録で仕事をする人たち。『記憶にない』と言い出すこと自体がおかしい」と述べた。

 一連の接待問題が発覚した当初、武田良太総務相が「放送行政がゆがめられたということは全くありません」とした国会答弁については、2人とも東北新社外資規制違反が発覚した段階で「誤り」と判定した。

 一方、要綱などに45カ所の誤りが見つかった「デジタル改革関連法案」の審議では、個人情報保護のあり方が議論になっている。

 海上幕僚部の2等海曹が女性隊員2700人分の個人情報ファイルを私的に使用する目的で持ち出した問題が取り上げられた。個人情報保護法違反の処分をしたかと問われた中山泰秀防衛副大臣は、「警務隊の捜査については性質上、答えは差し控えたい」と回答。しかし、実際には時効で処分は見送られていた。

 立岩氏は「この答弁は、捜査が進んでいてしかるべき時に処分するというニュアンス。明らかにミスリードだ」と判定。上西氏も同様の判断で、「答えたくない時にそれらしい理由を都合よく持ってくる」と指摘した。

 ワクチン接種をめぐっては、小林史明内閣府大臣補佐官がテレビ番組で、接種会場ごとのワクチンを公表し、会場を選ぶことで選択できると語った直後に、河野太郎行政改革相が「完全に勇み足。撤回をし、おわび申し上げたい」と訂正するなど政府の情報発信で混乱が続いている。イベントでは、ファイザー製ワクチンの移送方法をめぐる議論を取り上げた。

 ファイザーがワクチンの品質を保持するため、「冷凍移送が原則」との見解(3月8日時点)を一度示しながら、主に冷蔵輸送用の保冷パックを自治体に配った厚生労働省が「ファイザーにも確認し、やむを得ない場合はそういう形(冷蔵輸送)も致し方ないという判断をいただいている」と説明している。

 立岩氏は「混乱している。野党もファイザーに質問を出して確認していればもっと強い質問ができた」と指摘。上西氏は「ワクチンの性能が落ちたり、機能しなかったりすると意味がない。後から失敗では済まないので、きちんと影響を詰めて欲しい」と語った。

 この日の記者サロンには10…

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