伊予灘ものがたり、車両リニューアル JR四国が来春

福家司
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 【香川】JR四国は予讃線松山―伊予大洲・八幡浜間を運行している観光列車「伊予灘ものがたり」について、来春に新たな車両に置き換えると発表した。7年近く使われてきた現在の車両が見納めとなる12月まで、「ラストランイヤー」として記念イベントが予定されている。

 伊予灘ものがたりは、JR四国初の本格的な観光列車として、2014年に運行を開始した。西日本豪雨やコロナ禍による運休を乗り越え、延べ13万人余り(2月末現在)が利用。平均乗車率は90%近くに達し、沿線住民が手を振るなどのおもてなしも活発で好評だ。「ものがたり」を列車名に冠したJR四国の二つの観光列車誕生の契機にもなった。

 現在の車両は、国鉄時代の普通列車用「キハ47」ディーゼル車を改造したもので、老朽化が進んでいた。新たな車両は特急用「キハ185系」ディーゼル車を使い、現在より1両増やして3両編成になる。そのうち1両にイベント車両「アイランドエクスプレス四国Ⅱ」を使い、ワンランク上のサービスを目指す。

 列車は現在の快速から特急の扱いに変わり、乗車時は特急料金が必要となる。定員も10人程度増える見通しだ。デザインは現行車両や他の「ものがたり列車」と同様、社員の松岡哲也さんが担当する。改造費は前回の1億5千万円を数千万円上回りそうだという。

 12月までの「ラストランイヤー」に向け、アテンダントがデザインしたオリジナルロゴマークや利用者に配られる乗車記念証も発表された。10~12月の大型観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン」に合わせた特別ツアーも計画されている。

 記者会見した半井真司会長は「地域の方々が、この列車を育ててくださった。新たな伊予灘ものがたりもこれまで同様、地域に親しんでもらえる車両にしたい」と述べた。

 「アイランドエクスプレス四国Ⅱ」は、今回の改造で消滅する。1999年に特急用の185系ディーゼル車2両を改造して生まれた。カラオケ装置を備え、座席も3列でゆったりしていた。運転台のない中間車のため、運転台のあるキハ185ディーゼル車に前後をはさまれて運行された。

 2017年にはうち1両を、観光列車「四国まんなか千年ものがたり」に改造。残った1両も新型コロナウイルスの影響などのため、昨年3月を最後に出番がなくなっていた。

 車両は改造のため、3月に多度津工場に入った。すでに外装のラッピングは外され、座席も撤去されている。伊予灘ものがたりの新車両のデザインや設計が決まれば、改造工事に着手するという。

 19年に、アイランドエクスプレス四国Ⅱを使った「地酒列車」を企画した高松市の酒販会社経営佐藤哲也さん(61)は「団体客向けのサロンカーのような車両で、みんなでわいわい楽しむには最適だった」と惜しんでいる。(福家司)

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 「伊予灘ものがたり」の生みの親ともいえるJR四国の半井真司会長は3月29日の記者会見で、この列車への思いを語った。

 鉄道事業本部長を務めていた導入当時について、「鉄道に乗ることを目的とする観光列車を作ろうと考えた」と振り返る。突貫工事で車両を改造し、運行開始の20日ほど前にようやく完成したという。

 社員にデザインを任せたことについては、「資金面も大きいが、社員だったのでわれわれとコミュニケーションを取りながら、車両に思いを込めることができた。それがお客様には手作り感につながり、成功に至ったのではないか」と推測した。

 初便に乗った際にも、「五郎駅に今もいる(住民が扮した)『たぬき駅長』がいて、こみ上げるものがあった」として、「一番大きいのは地域のおもてなしで、乗客の感動になっている」と指摘した。

 2018年の西日本豪雨で約2カ月の運休を経て運行を再開した日のことを、「被災した住民にも喜んでもらい、復興のシンボルになるとお礼をいわれたのを思い出す」と振り返り、「引退後も元の車両を何らかの形で保存したい」と語った。