妊娠直後の「雇い止め」  県庁10年勤めても…非正規

末崎毅
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 神奈川県庁に非正規公務員として10年以上勤めてきた30代の女性が3月末での雇い止めを告げられた。「任用ポストの廃止」「コロナ禍で予算が削減対象とされた」などと説明を受けたが、女性は納得できないでいる。出産予定は5月に迫る。経済的な不安を抱えたまま新年度が始まった。

 「仕事がどうなっていくのか。中ぶらりんな気持ちです」。労働組合を通じて雇い止めの撤回を求めている女性は、新年度を迎えた心境を、こう説明した。

 女性は大学院を卒業後、県の福祉関係の専門職として相談業務などに携わってきた。2010年から任期付きの契約を更新し、直近の1年はパートタイムの会計年度任用職員だった。数年前に長男を出産した際には産休と育休を取って復職したという。

 昨年10月。新たな命が宿った女性は妊娠したことを職場に伝えた。専門性をいかせる魅力的な仕事だけに、出産後は育休を経て、復職したいと考えていた。

 ところが今年1月、上司から「来年度の任用は難しい」と告げられたという。女性や労組によると「任用してきたポストが廃止される」「コロナ禍における税収不足で当該の事業予算も削減の対象とされた」というのが理由だった。「妊娠が理由ではない」との説明もあったという。ただ、女性が担ってきた全業務がなくなるわけではないという。

 出産予定の5月が近づく一方で、産後や育児中の保障が受けられないばかりか、収入源も失いかねない現実。夫婦共働きとはいえ住宅ローンの返済などで家計は楽ではない。保育園に通う長男が通い続けられるのかもわからず、女性は不安で眠れない夜を過ごしたという。

 民間企業なら非正規労働者が5年を超えて就労していれば無期雇用に転換されるルールがあるが、公務員には適用されない。

 女性の代理人の嶋崎量弁護士は、今回の雇い止め育児休業を理由とする不利益な取り扱いを禁じる地方公務員育児休業法に反する運用だと主張し、労組は新年度に入っても交渉を継続。一方、県の労務担当は取材に「コロナで色々な事業が見直しになる中でポストの廃止が決まった。違法ではないと思っている」としており、議論は平行線だ。

 女性は訴える。

 「公の機関では非正規職員の立場が十分に守られていないという悔しさを感じさせられる。同じような立場の人が安心して働けるようになることを県に求めたい」(末崎毅)