9代目は農チューバー アメリカで見た景色が意識変えた

[PR]

 お米を育てながら、その様子をユーチューブの動画で発信する農家の若き9代目が、宮城県加美町にいる。農業に携わる人を増やそうと、「農チューバー」として活動に励んでいる。

 「種もみの催芽(発芽)を促して、種まきに向けて成長させていきます」

 4月初旬、山城恵介さん(24)が自宅の作業場で、目の前のカメラに語りかけた。大量の種もみを温水に浸した後、その意味を解説したのだ。種もみは温められて芽を出すと、土にまかれ、苗へと育っていく。

 やや地味な作業だが、「農家ってこんなことをしているんだ、と新鮮に感じてもらえれば」と、田植えに向けた日々をユーチューブ用に撮影している。

シリコンバレーから戻って

 農家に生まれた山城さんは、子どもの頃は農業に関心が向かなかった。仙台の高等専門学校を卒業後、米国に留学。シリコンバレーに住み、IT大手での活躍を夢見ていた。

 そんな山城さんだったが、米国で農家が集まる市場で、消費者が直接野菜を買う習慣が根付いているのを目の当たりにして、意識が変わった。日本でもこれから農産物への意識が高まっていくはずだと感じた山城さんは、2017年秋に加美町に戻って就農した。

 「消費者と農家を近づけるため、まず農業に興味を持ってもらいたい」。そう考え、ユーチューブに着目。18年春、本格的に撮影を始めた。

 以来、走っているトラクターの運転席から見える田んぼの風景や、稲が刈られていくのを上空から見下ろす光景など、様々な動画で米作りを紹介してきた。

 視聴者から最近、「生産者が分かるお米を買いました」とコメントが届き、動画の反響に驚いた。

「めちゃくちゃぜいたくなことだった」

 加美町に戻って気づいたのが、自家製の野菜を食べられる幸せだ。

 祖母のつねよさん(76)が育てたトマトを幼い頃から何げなく食べてきたが、「めちゃくちゃぜいたくなことだった」と身にしみた。そして「家族がつないでくれた農業を、自分たちの世代も残していきたい」と考えるようになった。

 「これからも農家は減っていくだろうけど自分の動画を見て、『こんな仕事があるんだ』『農家を継いでみようかな』と思ってもらえる人がいれば」。そんな思いを込め撮影を続ける。

 今後は取り上げる場を、宮城の各地や、東北へと広げたいと考えている。(徳島慎也)