リコール署名問題、市長選で問いますか? 名古屋市民は

佐藤瑞季 仲川明里 東谷晃平
【動画】告示された名古屋市長選挙、コロナ対策やリコール署名など争点に
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 名古屋市長選が11日に告示された。大村秀章愛知県知事に対するリコール署名が偽造事件に発展し、署名活動を支援した現職の河村たかし名古屋市長説明責任を問われるなかで始まった市長選。有権者はどう考えているのか。

 「リコール問題で更に不信感が増した」。名古屋市千種区に住むIT企業の会社員男性(35)は、河村氏を批判的にみている。

 リコール問題など、河村氏と大村秀章愛知県知事との溝は深い。県と市の連携不足を心配していたところに、リコール署名が偽造事件に発展。署名集めを支援した河村氏は偽造や不正への関与を否定するが、男性は「問題に関わっている可能性のある人が、市長を務めるべきではない」と指摘する。

 男性は、投票にはあまり行っていないというが、今回の市長選は行くつもりでいる。「河村さん以外なら誰でも。次に勝てそうな候補に入れるつもりです」

 中区でコンサルティング会社を経営する男性(73)も、「河村氏以外なら誰でもいい」と話す。

 これまでも河村市政には批判的だったという。長年暮らしている名古屋は、ほかの大都市と比べて文化的な魅力が低いと感じる。「経済を優先させてきたツケだ」。リコール問題を受け、「さらに不信感が強まった。ほかの候補者が何を訴えているかは知らないが、久々に投票に行きます」と男性は話した。(佐藤瑞季)

 リコール問題があっても、河村氏に投票するという人も少なくない。

 千種区の女子大学生(21)は「河村さんへの信頼感と安心感が、これで揺らぐわけではない」と言う。

 初めて投票する名古屋市長選。ニュースで見る市長は、懸命に働いていると思う。「(署名偽造の)本当のところはわからないし、選挙には関係ない」。ほかの候補者はよく知らず、任せるのが不安という。

 目指す福祉関係の仕事は、低賃金と聞くので心配だ。河村氏には「若い世代のため、雇用や賃金を重視してほしい」と注文する。

 港区に住む年金暮らしの男性(78)は、これまでの市長選と同様に河村氏に投票するつもりだ。「河村氏が不正に関わる理由がない」。看板政策の「減税」に期待しているという。

 繁華街・中区錦で画廊を営む女性(60)も「リコールと市長選は切り離して考える」。不正に関わったとも思えず、今まで通り河村氏に票を投じるという。河村氏の市政運営には「自分の給料を下げたほかは、何もしていない」と手厳しい。しかし、現状にそれほどの不満もない。「選択肢は一つです」

 河村氏に期待するのは、コロナ対策だ。周辺にも、夜逃げ同然で閉店した飲食店がある。「まちの活気がなくなるのが悲しい。活気ある錦が戻ってきてほしい」と話した。(仲川明里)

 瑞穂区の女性(47)は、今回誰に投票するか、まだ決めていない。「今後、市長として何をやるかが大事なので」と、投票先を決めるのにリコール問題は考慮しないという。3人の子どもがおり、重視するのは子育て支援だ。「少子化対策のためにも、子育て世帯への経済的な支援を充実させてほしい」と期待する。

 名東区の男性(42)は、「リコール問題の渦中にいる人が、市長でいいのかな」と疑問は感じるが、投票には行かない予定だ。

 河村氏以外に、投票したくなる人がいないという。河村市政に、それほどの不満もない。「新しい風を期待したいけれど。世間に決めてもらえばいいです」

 飲食宅配の代行業で配達員をしている男性(28)は、「リコールにも選挙にも関心がない」と話す。コロナ禍で配達員が増えたことで、稼ぎが減ったのが今の悩みだという。「リコール問題は何となくしか知らないが、自分には関係ない。誰が市長になっても、自分の生活が変わるわけでもない。投票には行かないと思います」(東谷晃平)

リコール署名偽造事件とは

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」をきっかけとする愛知県大村秀章知事へのリコール署名活動は、県選挙管理委員会が、提出された署名約43万5千筆の約83%に無効の疑いがあると発表。県選管などの刑事告発を受理した愛知県警が、地方自治法違反(署名偽造)の疑いで捜査している。

 街頭で署名を呼びかけるなど、現職市長の河村たかし氏もこの活動を支援していたため、偽造事件に発展したことで責任を問われている。河村氏は、不正に気づかなかったとして陳謝しつつ、署名の偽造については「(自らが)やるはずがない」と強調。この問題は「選挙にはあまり関係ない」と主張しながらも、公約には「徹底的に真相究明」などと盛り込み、説明責任を果たす姿勢をアピールしている。

 選挙戦は、元名古屋市議の横井利明氏との事実上の一騎打ちの構図で、横井氏は「河村氏には道義的責任がある」と指摘している。NPO代表の押越清悦氏、元会社員の太田敏光氏も立候補を届け出ている。