米大統領と菅首相、1番に会う意味 過去会談を分析した

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半田尚子、荒ちひろ

拡大する写真・図版米ニューヨークで大統領就任を控えたトランプ氏(右)と会談し、握手する安倍晋三前首相=2016年11月、内閣広報室提供

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 日米首脳会談が16日(米国時間)に開かれる。菅義偉首相は、米バイデン大統領が初めて直接会って会談する外国首脳になる。日本は1番という順番に価値を置くが、米国はどうか。首脳会談の順番から、どんな意味が読み取れるのか。

 「直接会談する最初の外国首脳。バイデン政権が我が国との関係を極めて重要視している証しだ」。3月末、菅首相は日本がバイデン大統領の「初会談」の相手国となったことをこう強調した。日本政府が今回の会談の目玉にするのは、バイデン大統領にとって「初めて」という対面会談の順番だ。

 米国務省の資料などをもとに、1981年就任のレーガン大統領以降、米大統領が各国の首脳とどんな順番で会談してきたかを調べたところ、89年のブッシュ(父)大統領の就任時も、竹下登首相が「1番乗り」で訪米して会っていた。

拡大する写真・図版【一覧】歴代米大統領は何番目に日本の首相とあったのか

 日米首脳の面会は、少なくとも81年以降でみると、比較的早いタイミングで実現している。クリントン大統領の就任時(93年)は日本の首相が11番目、ブッシュ(子)大統領(2001年)は8番目。最近はさらに前倒しの傾向が強まり、オバマ大統領(09年)は2番目、トランプ大統領(17年)は3番目だった。会談はいずれも日本の首脳が訪米する形で実現してきた。

 日米首脳の面会が最近比較的早いタイミングで実現していることについて、明治大の海野素央教授(異文化間コミュニケーション論)は「中国や北朝鮮の台頭により、日本の軍事拠点としての重要性が増したことが影響している」とみる。今回の日米首脳会談については「1番という順番は米国にとっても重要。会談にはそれなりの成果が要求されるはずだ」と指摘する。

 一方、米ホワイトハウスも11日、日米首脳会談バイデン大統領にとって初の外国首脳との対面会談となることについて触れ、「日本との二国間関係と、日本の人々との友情とパートナーシップを重視していることの表れ」と強調した。

 バイデン政権は、外交政策において何を重んじているのか。すでに行ってきた会談の回数や順番に、そのヒントを探ってみた。

 ホワイトハウスなどの発表をもとに、バイデン大統領、ハリス副大統領、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官の4人が参加した会談の実施順を調べた。10日までに4人がそれぞれ行った電話会談(計145回)、オンライン会談(計7回)、対面会談(計14回)のうち、会談回数は最多がフランスで8回、英国とドイツが7回で続いた。日本は6回で韓国やサウジアラビアなどと並んだ。

拡大する写真・図版バイデン大統領の電話会談順

 バイデン大統領はコロナ禍で制約が大きい中、日本も含めて電話会談を20回こなしている。1番は隣国カナダで、2番はメキシコ。日本は7番目だ。順番が早かった10カ国のうち4カ国が北大西洋条約機構(NATO)加盟国、3カ国が日米豪印によるインド太平洋地域での協力の枠組み「Quad(クアッド)」に属する国だった。

拡大する写真・図版ハリス副大統領の電話会談順

 ハリス副大統領デンマークのフレデリクセン首相やノルウェーのソルベルグ首相など女性首脳らと電話会談し、女性労働力を生かす支援の重要性などを話し合っている。日本との会談はまだない。

 神戸大大学院の簑原俊洋教授(国際政治)は、バイデン政権の外交戦略について、「米国は中国の急成長でかつてほど圧倒的な存在ではなくなった。米中対立で優位に立つため、多国間の枠組みを重視した『面』の外交を展開している。米国は今回の会談で、日本をしっかり対中包囲網に組み込みたいと考えているだろう」とみる。

拡大する写真・図版オバマ元大統領の会談順

拡大する写真・図版トランプ前大統領の会談順

 バイデン政権にとどまらず、歴代米大統領の就任時の会談順からは、政権が重要視する地域や外交政策との関連性が透けて見える。オバマ氏は対面会談が早かった上位10カ国の過半数がNATO加盟国だった。トランプ氏は上位10カ国のうち4カ国を中東にある国が占めた。(半田尚子、荒ちひろ)

日本の「一番乗り」、米側は言いたくなかった? 海野素央さん

 「初めての対面会談」から何を読み取るのか。米政治に詳しく、過去4回の大統領選挙に民主党のボランティアとして関わった、明治大学の海野素央教授(異文化間コミュニケーション論)に聞いた。

拡大する写真・図版明治大学の海野素央教授=本人提供

 バイデン大統領と対面会談する「初めての首脳」になる菅義偉首相は、「バイデン政権が我が国との関係を極めて重要視している証しだ」と強調している。

 日本の首相にとって米国大統領と会う順番は、通信簿のようなもの。めぼしい成果はなくても、順番だけで米国との蜜月をアピールできる首脳会談は、外交の得点稼ぎになる。歴代の在米大使は、そのアポを取り付けられるかどうかも評価の対象になると言われるほどだ。

 安倍晋三前首相は就任前のトランプ前大統領に会いに、自宅のあるニューヨークのトランプタワーまで足を運んだ。就任前の大統領に首脳が面会することは異例だ。菅首相も前任者があれだけ強烈にトランプ氏と面会したので、バイデン氏と「最初に会いたい」という気持ちは強いはずだ。

 対面会談はこれまで日本の首相が訪米する形で実現してきた。力関係は日本が劣勢で、恋愛で言えば2人の間に「温度差がある」ということだ。

記事後半では会談順から読み取れる米側の思惑について神戸大学大学院の簑原俊洋教授が、「会う順番」から読み取れる心理について立正大学の川名好裕教授が読み解きます。

 今回の会談があることは日本…

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