1歳迎えたダウン症の我が子へ 心からの「ありがとう」

後藤隆之
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 生まれてきてくれて、ありがとう。心からそう思っているよ――。ダウン症児の母12人が、1歳を迎えた我が子へのメッセージを集めた冊子をつくった。誕生を素直に喜べなかった時期を経て、かけがえのない存在と思えるようになった経験を、同じ境遇の人たちに届けたいという。

 冊子は「1stBirthdayMessage(ファーストバースデイメッセージ)」。企画した石山裕未さん(38)=千葉県柏市=は「子どもを愛し続けられるか不安に思う人もいるかもしれない。けど、きっと大丈夫」と話す。

 正常ではないんだ、という衝撃、が一番近い感情だったかも

 長女の出産から約3時間後、医師からダウン症と告げられた。パニックになり、夫の薫さん(38)に抱きついて泣いた。

 娘はダウン症に由来する心疾患で入院し、大きな手術を受けた。家族3人の生活が始まったのは、生後4カ月が過ぎた頃だった。

 もっと抱きしめて、頰ずりして、大好きだよと伝えればよかった。あの時だけの彼女の匂いや体温、手触りをもっとインプットしておけばよかった

 ほかのダウン症児の母親は、どんな暮らしをしているんだろう。インスタグラムでつながりを求め、子連れで公園に行き、お茶をする友達ができた。

 それでも不安は尽きなかった。娘は2歳になっても歩き始めず、母親たちの投稿を読み返した。「強い思いで子育てしている人がいることが励みになった」

 インスタでは、1歳の誕生日に合わせ、その1年間を振り返る投稿を多く見つけた。我が子をかわいいと思えない時期があったことや、少しずつ成長する姿を見て、自分も仕事に復帰しようと考えるようになったこと。「それぞれの家族の物語が詰まっていました」。石山さん自身、フリーランスで企業の業務改善を提案する仕事と子育てを両立している。

 冊子づくりを思い立ったのは1月。インスタで交流する母親たちに協力を求めた。愛知や広島、山口など住む場所もそれぞれで、会ったことがない人が半数以上。2月からクラウドファンディングサイトで資金を募り、目標額の250万円を超える支援が集まった。

 冊子には当時の投稿に加え、今の心境を載せた。ほかの母親たちはこんな言葉を寄せている。

 ダウン症があっても親バカしていいんだってことを教えてくれた

 将来のことを悲観して育てていくのはなんだかもったいない気がして。せっかくだから、『何ができるか』を夢見てもいいんじゃないかなーと

 石山さんは「いろんな子がいるように、いろんな育児がある。孤独と不安を感じている親たちが、前向きになれる手助けをしたい」と話す。

 B5判40ページ。生まれたばかりのダウン症児を育てる親たちに冊子を届けたいとしている。問い合わせは製作委員会(1stbirthdaymessage@gmail.comメールする)。(後藤隆之)

クラウドファンディングで支援募る

 石山さんらは、クラウドファンディング「A―port」(http://t.asahi.com/wkbf別ウインドウで開きます)で支援金を募っている。支援してくれた人に冊子などを提供する。16日まで。

ダウン症

 正式名称はダウン症候群染色体突然変異により、筋肉の緊張を維持することが難しく、知的発達の遅れや心疾患を伴うことが多いが、個人差がある。書道や絵画など芸術分野で才能を発揮する人もいる。最初に報告した英国人医師ジョン・ラングドン・ダウン氏から名付けられた。国立成育医療研究センター(東京)の推計では2010~16年の毎年、ダウン症児は約2200人生まれたという。