「意外な展開、涙が」 保護された野良犬の実話、絵本に

小野大輔
[PR]

 野良犬が保健所に収容された。命を守ろうと引き取った親子は、犬の名前に関する意外な事実を知る――。

 そんな実話を元にした絵本が出版された。絵を手がけたのは神戸市の絵本作家金澤麻由子さん(39)。「動物の命の尊さを思うきっかけになれば」と願う。

 絵本は「きみのなまえ」(佼成出版社、1320円)。福岡市内の林にすみついていた中型の野良犬がモデルになっている。

 おどおどして人を恐れ、やせ衰えていく犬。見かねた近くの親子が飼うことを決心し、「保護に協力してください」と書いた看板を林の近くに立てた。

 ある日、保健所に収容されたことを知った親子は、急いで犬を連れて帰った。

 栗色の毛にちなんで名前は「クリ」に。飼い始めたと看板で報告すると感謝の言葉が次々と貼られた。

 そしてメッセージに書かれたクリの「名前」から、地域の人々がクリを愛していたんだと親子は気づく。

 朝日新聞はこの話題を2019年6月23日付朝刊社会面で報じ、朝日新聞デジタルでも配信した(https://www.asahi.com/articles/ASM6M5G43M6MUTIL03L.html)。

 記事を読んだ児童文学者のあんずゆきさんが絵本の制作を発案。「ぼくぱぐ」などの動物を描いた絵本で知られる金澤さんが絵を担当することになった。

実際に行動に移すことの難しさも

 金澤さん自身、子どものころ公園で捨て犬を拾って飼った経験があり、物語に親近感をおぼえたという。

 人におびえていたクリが、保護してくれた親子に対して心を開いていく様子を、目つきや毛並みで細やかに表現した。名前の秘密が明らかになるクライマックスでは、クリの柔らかな表情が特に印象的だ。

 「保護犬にまつわる心温まる話でありながら、実際に行動に移すことの難しさも映し出した」と金澤さんは言う。

 今年1月末の出版後、販売しているウェブサイトのレビュー欄には「とても優しい物語。孫に読み聞かせたい」「読み進むうち予想外の展開になり思わず涙が…」といった感想が書き込まれている。

 金澤さんは「捨てられ、処分されそうな犬もいる。ペットを飼う際は保護された犬も選択肢に入れてほしい」。

 主人公の犬を実際に引き取った橘秀美さんによると、保護から約2年半たった今も元気だという。

 絵本は書店のほか、ウェブサイト「minne(ミンネ)」やアマゾンで購入できる。(小野大輔)