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「ワクチン接種限定」看護師の労働者派遣を全国解禁へ

新型コロナウイルス

岡林佐和
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閣議に臨む田村憲久厚生労働相=2021年4月13日午前8時18分、首相官邸、恵原弘太郎撮影
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 厚生労働省は13日、新型コロナワクチン接種に限り、派遣会社から医療現場への看護師派遣を全国で解禁する方針を決めた。注射を打つ看護師が不足する自治体の要望に応える。医療現場への労働者派遣がなし崩し的に広がらないか、警戒する声も出ている。

 13日、厚労省の審議会の部会で、労使の委員からほぼ了承された。医療現場への看護師派遣は人手不足が深刻な地方部で4月から認められたが、都市部では禁じられていた。

 コロナ禍への特例として、看護師と准看護師によるワクチン接種業務に限って解禁する方針。時期も来年2月末までに限る。自治体には事前研修を徹底するよう求める。

 この日の会合では「今回の派遣の措置は、あくまで期間を区切って認めるもの。これをきっかけになし崩し的に安易に派遣の拡大を認めるようなことがあってはならない」と労働側の委員が釘を刺す場面もあった。ただ「ワクチン接種のため万全を期すべきだ」と解禁を認める意見が大勢を占めた。審議会の議論は9日に始まり、実質2日間で決着した。厚労省は5月の連休明けごろとされる接種の本格実施に向け、必要な省令を改正する見通しだ。

 厚労省が3月、ワクチン接種の特設会場を設ける予定の全国の自治体にたずねると、都市部でも約2割の自治体が看護師不足を訴えた。全国知事会中核市市長会も2~3月、都市部でも医療現場への看護師派遣を認めるよう求めていた。ワクチン接種の特設会場は医療法上の「診療所」となり、医療現場と同じ扱いになる。

 1999年に労働者派遣が原則自由化された当時、看護師など医療職の労働者派遣は禁止だった。医療現場では高度なチーム連携が求められるとの理由からだ。だが、近年は看護師不足を理由とした緩和の動きが相次ぐ。

 まず2003年に社会福祉施設への看護師派遣が解禁された。介護などのサービス利用者の日常生活を支える業務は高度なチーム医療とは異なるとされた。社会福祉施設では今年4月から30日以下の「日雇い派遣」も認められるようになった。

 コロナ禍の特例とはいえ、看護師派遣の拡大には懸念の声もある。労働法制に詳しい脇田滋・龍谷大名誉教授は「派遣の場合、派遣先となる自治体は働き手を選考できずどんな人が来るかわからないリスクがある。看護師の資格を誰が確認するか責任があいまいになる問題もあり、ワクチン接種の現場が混乱するのではないか」と指摘。働く環境の改善も重要な課題であることを踏まえ、「労働者派遣では派遣会社への仲介料が必要になる。自治体が直接雇用し、その分を看護師の待遇改善にまわすべきだ。規制の緩和によって看護師不足の解消とは逆行する恐れがある」と話す。(岡林佐和)

派遣会社からの看護師派遣をめぐる規制緩和が続く

1986年 労働者派遣法施行。一部の専門職限定。医療は禁止

1999年 労働者派遣の原則自由化。医療など5分野は禁止

2003年 社会福祉施設での看護師派遣を解禁

2012年 日雇い派遣が原則禁止に

2021年 地方部の医療機関での看護師派遣を解禁

     社会福祉施設での看護師の日雇い派遣を解禁

     都市部の医療機関でもワクチン接種業務に限り解禁へ

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