ケン・ローチも描いた生理の貧困 想像力が社会を動かす

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岡崎明子
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岡崎明子の「多事奏論

 タブーという言葉の語源は、一説にポリネシア諸語で「月経(生理)」も意味する「tapu」といわれる。

 確かに私自身、体調が悪い理由が風邪なら言うが、生理痛だったらひた隠す。これって何かに似ているなあと考えて気づいた。職場での子育て苦労話と同じだ。

 朝日新聞は女性登用を進めているが、記者の原稿を編集するデスクのほとんどは男性だ。ましてや育児中の女性デスクはわずかしかいない。その一人である私は朝刊を作る当番を担えず、その分、ほかのデスクの仕事が増えてしまう。だから、私から子育ての苦労話をするのはタブーなのだ。「話しても想像がつかないのでは」という思いも混ざり、この話題を避けてしまう。

 「生理の貧困」というタブーがこの春、日本でも可視化された。大学生らが立ち上げた団体「#みんなの生理」が3月、若者へのネット調査の結果を発表した。671人中、5人に1人が「経済的な理由で生理用品を買うのに苦労した」と答えた。

 この結果が報じられると、いくつもの自治体が防災備蓄用の生理用品を無償配布し始めた。国会でも取り上げられ、政府は困窮する女性を支援するための交付金の使い道に、生理用品の無償配布を含めた。

 生理の貧困をなくそうという市民運動は、欧米では数年前から始まっていた。

 きっかけの一つとなったのが、英国の巨匠ケン・ローチ監督による5年前の作品「わたしは、ダニエル・ブレイク」だ。

 スーパーで買い物したシングルマザーのケイティは、食料品の代金は支払いながら生理用品を万引きして捕まってしまう。

 このシーンが英国では話題となり、スコットランド議会は昨年11月、全ての人に生理用品を無償提供する法案を可決した。

 私も当時、この映画を見て、ケイティの胸の中で入り交じったであろう「矜恃(きょうじ)」と「惨めさ」が胸の奥に入り込んできた。

 でもそのときは、同じ問題が日本にもあるだろうとは、思わなかった。新聞記者として、恥ずかしい想像力のなさだ。

 さかのぼること29年前。ある通信社の入社試験を受けたとき、事前に「記者に必要なこと」を書いて送るよう求められた。

 記者に必要なことって? 考…

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岡崎明子

岡崎明子(おかざき・あきこ)朝日新聞医療サイト「アピタル」編集長

科学医療部記者。広島支局をふり出しに、科学医療部で長く勤務。おもに医療、医学分野を担当し、生殖医療、がんなどを取材。特別報道部時代は、加計学園獣医学部新設問題の取材で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞。オピニオン編集部デスクを経て、2020年4月からアピタル編集長。