自由求める香港の映画、日本と合作「世界に広げたい」

佐藤美鈴
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 香港と日本の合作で製作が進む映画「BlueIsland 憂鬱(ゆううつ)之島」のプロデューサーによる記者会見が13日、オンラインで開かれた。民主派の弾圧が続く現在の状況を踏まえて過去の民主化運動などを描く作品。香港在住のピーター・ヤム氏は「映画を用いて今日の色々な出来事を記録しておくことが重要な意味を持っていると信じている」と語った。

 映画は、中国の文化大革命や1960年代の香港の反植民地闘争、89年の天安門事件と三つの時代を経験した実在の3人を、ドキュメンタリーとドラマを融合させて描く。撮影を始めて1年半後の2019年に「逃亡犯条例」への抗議に端を発した民主化デモが始まり、昨年6月末には国家安全維持法が施行された。19年以降のデモに参加した若者らも出演するという。

 製作は「乱世備忘 僕らの雨傘運動」のチャン・ジーウン監督とプロデューサーのヤム氏、さらに「十年」のアンドリュー・チョイ氏も共同でプロデューサーを務める。

 「乱世備忘」を配給した縁で日本から共同製作プロデューサーとして参加する映画配給会社「太秦」の小林三四郎代表は「香港の社会は私たちの想像を超えるスピードで変化し、自由の世界が狭められている」と危機感を示した。「私たちが日本にいて出来ることは何か。ミニシアターを多く抱える日本で上映し、日本がこの作品の世界展開のハブの役目を担いたい。日本を基点に世界にこの作品を広げて、香港の現状を皆さんに知っていただければと思う」と語った。

 ヤム氏は「60年代以来、ずっと香港の人たちは自由を求めてきた。そういった歴史をスクリーンで再現したかった」と話す。映画では、60年代、70年代、80年代の香港における自由を求める運動と、2019年の香港で起きた出来事を融合した形で描くという。「当時自由を求めた若者と現代の若者の共通点と違いを浮き彫りにする。当時自由のために闘った記憶は、今日の若者の助けとなり役に立つのではないかと思う」

 今年48歳というヤム氏は「年をとるに連れて、若者が社会にとってどれだけ大切か再認識している。我々の努力で、次の世代に素晴らしい香港を残したい」「香港が引き続き国際都市であり続けることを切に願っている」と語った。

 13日の会見では「想定されるリスクを避けるため」として香港の外にいるというチョイ氏の参加が急きょ取りやめとなった。ヤム氏は会見で「国家安全維持法の施行でどう変わったか」との質問に対して「非常にデリケートな問題でここで皆さんと共有することはなかなか難しい。ただ、クリエーターとしてはきちんと我々の責務を果たそうと考えている」と言葉を選びながら答えた。

 小林代表は「香港の仲間の安全を担保しながら、必ず完成させたい」と力を込めた。

 コロナ禍で製作資金が不足していることから、映画の完成に向けてクラウドファンディングhttps://a-port.asahi.com/projects/blueisland2021/別ウインドウで開きます)を実施している。日本では今年の秋ごろ、東京・渋谷のユーロスペースでの上映を予定している。さらに今後、映画祭などでの上映も目指していくという。(佐藤美鈴)