「首相は約束守らない」説明会1回だけ、福島の漁師憤り

佐々木達也
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 「本格操業へ向けての移行期間が始まったばかり。なんでこんな時期に決めるのか。はらわたが煮えくりかえる」

 福島県新地町の漁師小野春雄さん(69)は処理水の海洋放出の決定方針に憤った。福島県沿岸漁業は3月末に操業海域や日数を制限する試験操業が終わり、数年かけて本格操業に踏み切ることを決め、4月から移行期間に入ったばかり。その矢先の決定だけに、声は大きくなる。

 小野さんは2018年、富岡町で開かれた公聴会で意見を述べた。「漁師の声を聞いてほしい」と詰め寄った。今回の海洋放出についても、小野さんらへの説明会は1回のみ。こうした姿勢に、小野さんの目には「18年当時と政府は変わっていない」と映る。

 小野さんは東京五輪聖火ランナーに選ばれ、3月下旬に新地町内を走った。漁師を励ましたい一心だった。「福島の聖火リレーが終わるのを待っていたみたいだ。漁師が納得しない限り、放出はしない約束だったはずなのに、首相は約束を守らないのか」と怒りは収まらない。

 小野さんは海洋放出決定後、風評で価格が下落することを心配する。「もし東電から賠償があっても、魚価が安ければ漁師の士気が下がる。後継者も育たない」と嘆いた。(佐々木達也)