本屋大賞の町田そのこさん 消えぬ記憶「声なき声」描く

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興野優平
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 全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選ぶ本屋大賞に、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)が選ばれた。昨年4月に刊行され、すでに15刷34万部。初めての長編で、いきなり大きな賞に輝いた。

 小学生のころから作家にあこがれ、2017年に連作短編集「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」でデビューしたばかり。作家を夢見るようになったのも、一度はあきらめた夢を取り戻したのも、あの作家の存在がきっかけだった。

 ――鳴く声の周波数が高すぎるため、仲間に自分の声が伝わらないという「52ヘルツのクジラ」。その孤独になぞらえて、児童虐待の被害者や性的少数者の社会に届かない声を紡ぎました。受賞作の着想はどこから生まれたのでしょうか。

 海洋生物のことを調べていて、52ヘルツのクジラの存在を知りました。でも、このモチーフは長編じゃないと書き表せないのではないかと思いました。当時は短編連作を書くと決めていたんです。

 それとは別に、自分が子どもを産んで育てているあたりから、虐待問題にすごく意識が向くようになった。もし近くにそういう(被害にあっている)子どもがいたら、私は何ができるかなと、子育てをしながら頭の隅でずっと考えていた。

 なので、長編を書きませんか、と言われたときに、52ヘルツのクジラを書くときがきた、と思いました。じゃあ52ヘルツのクジラとはなんだろう、誰にも届かない声とはなんだろうと思ったときに、自然とそれまで気にしていた児童虐待につながりました。

 小説として作品に落とし込んでいくことで、自分なりの回答を見つけたような気がしています。自分なりに、こういうことができるんじゃないかと考えながら書き進めました。

 ――作家になった経緯を教えてください。

 小学3年のときに、作家にな…

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