閉店時間8時→9時→8時 店を振り回す時短、効果は

新型コロナウイルス

藤野隆晃
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 コロナ禍の中、飲食店への営業時間の短縮要請が東京都内に断続的に出されるようになって1年。12日からは午後9時だった閉店時間が再び午後8時になった。わずか1時間、されど1時間。飲食店への影響は大きいが、感染防止の効果はどのくらいあるのか。(藤野隆晃)

野球中継、八回で…

 JR新橋駅近くのスポーツバー「GOOD『A』」。13日午後7時50分、広さ30畳ほどの店内には、天井近くに備え付けられたスクリーン計16台で、北は仙台、南は福岡まで各地のプロ野球の試合が流されていた。中央や壁のカウンター沿いにあった13の席には客は1人だけだった。

 中日ファンという世田谷区の会社員男性(34)は手元のスマホから時折顔を上げて、巨人戦を眺めていた。中日が1点を追う八回表2死。代打が三振で凡退すると、席を立った。「結果はネットニュースで見ますよ」。時間はちょうど午後8時。男性が店を出ると、アルバイト店員2人が、スクリーンを順番に消していった。

 店は12日から「まん延防止等重点措置」による都の要請を受け、午後8時に閉店。それまでは午後9時まで営業し、客は1日に10人ほどだったが、12日は5人に届かず。13日は2人だった。

 プロ野球は午後6時台に始まり、9時前後に終わることが多い。店長の田中三太さん(43)は「午後8時閉店は終盤の一番良いところが見られない。客も『それなら家で試合を見よう』となる」と嘆いた。

店主「せめて9時に」

 店は2019年12月に開店。直後にコロナ禍が襲い、経営は苦しい状況が続く。「今年は野球がやっているだけましかな」と思うが、客足の鈍さなどから、16日以降の平日は休みにするつもりだ。

 午後8時→10時→午前0時→午後10時→8時→9時→8時。この1年、飲食店は断続的な時短要請に苦しめられてきた。

 JR新橋駅前の居酒屋「根室食堂」の平山徳治店長(49)は「3月と比べても売り上げが半分くらいになるのでは」。会社勤めをしている人が仕事が終わるのは午後6時で、店にやってくるのは7時ごろになることが大半だ。1時間では飲食を楽しむには短い。「せめて9時までやらせてもらえないだろうか」と肩を落とした。

「時短は効果あるか」指摘も

 東京など6都府県に広がった重点措置で、国内総生産(GDP)は約5540億円減る――。野村総合研究所の木内登英氏は、そんな試算をまとめた。

 木内氏は感染拡大に歯止めがかからなければ、適用地域がさらに広がり、3回目の緊急事態宣言につながる恐れがあるとした上で、「過去2回の宣言時に続いて、日本経済が落ち込む可能性がある」と厳しく見る。

 閉店時間を午後8時までとしたことで、店でひとりで食事をする人も減ると推測。「飲食店だけでなく、卸や小売店、メーカーなどに相当の悪影響は避けられない」と指摘する。

 国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生)は「コロナ禍も1年以上続き、会食をしたい人は昼飲みなどをしている。『午後8時』で人々の行動様式がどう変わり、感染対策につながるのか」と疑問視する。

 和田教授は、経済全体への影響を考慮すれば、閉店時間で人の動きがどう変わるかといったデータなどを踏まえ、要請対象を絞る必要があるとした上で、「もし引き続き時短要請するにしても、ラーメン店など短い時間で会話が少ない業態を同じように扱うかは議論が必要だ」と話している。

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