海外客断念、そして来た連絡 元祖インバウンド旅館は今

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伊木緑
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 「いったいどんな夏になるんだろう」

 東京・谷中にある旅館「澤の屋」の3代目、澤新(あらた)さん(52)は、五輪開幕まで100日を切ったいまも、想像できないでいる。

 全12室の小さな日本旅館だ。今夏の東京五輪の期間中は多くが海外客の予約で埋まっていたが、3月に海外からの観客受け入れ断念が決まると、キャンセルの連絡が3件入った。まだ意向を確認できていない人もいるという。

 1980年代から海外の個人客を受け入れ始めた「元祖インバウンド旅館」だ。戦後まもなく、祖母が創業。その娘である母ヨネさん(77)と銀行員だった父功さん(84)が前回の東京五輪があった64年に結婚、経営を継いだ。石油危機の後、客が激減した時に同業者の勧めで始めたのが海外客の受け入れだった。

 宿泊情報を海外に提供する団体に入ると、客が入り始めた。外国人は夕飯を宿で取らない人が多いため、一泊二食付きだった旅館の常識を覆し、代わりに近隣の飲食店の地図を配った。店に頼んで英語のメニューを置いてもらった。節分の豆まき冬至のゆず風呂など季節の行事も企画。それ以外、特別なことはしていない。客のニーズに応じて少しずつ工夫しただけ。口コミが広がり、客の9割前後が海外客になった。部屋の稼働率も9割前後が続いた。

売り上げは以前の3分の1

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