東芝再建の旗振り役、対立と不信のすえ「事実上のクビ」

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小出大貴、細見るい 鈴木康朗、稲垣千駿 新宅あゆみ
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 東芝の車谷暢昭社長が、辞任に追い込まれた。不正会計の発覚から6年。外部から招かれた「再建の旗振り役」への不信感が社内外で募り、限界に達した。国策と寄り添う巨大電機メーカーは、再び迷走している。

 東芝は14日に開いた臨時の取締役会で、「車谷氏の意思による社長辞任」を了承したが、その後の記者会見に臨んだのは、後任の綱川智氏と取締役会議長の永山治氏。

 車谷氏は出席せず、そのコメントが代読された。ことし1月、東証1部に3年半ぶりに復帰したことに触れて「東芝再生ミッションが全て完了し、達成感を感じている」とした。

 額面通りに受け取る向きは少ない。辞任したのは、代表執行役社長CEO(最高経営責任者)だけではなく、取締役も含めた、すべての役職。「事実上のクビだ」と、複数の関係者は話す。三井住友銀行時代の車谷氏を知る主力行の幹部も「彼は続投したかったと思う」。

 永山氏ら社外取締役は、車谷氏の解職をはかる準備をしていたと、複数の関係者は明かす。

 辞任劇に至った背景の一つに、東芝経営陣と大株主との対立がある。

 根っこは6年前までさかのぼる。不正会計が2015年に発覚。翌16年には米国での原子力発電事業の失敗による巨額損失を発表した。上場廃止の危機を約6千億円の増資で乗り切ったが、この増資を引き受けた約60の海外ファンドを株主として抱え込んだ。

 車谷氏が東芝に移った18年以降、不正取引などのガバナンスの不備が新たに発覚すると、これらの株主の一部から厳しい目にさらされ対立を繰り返してきた。

 昨夏の株主総会での取締役選任案への賛成率は、わずか58%。今夏の総会を乗り切れるか、予断を許さない状況だった。

 そんな車谷氏にとって、「古巣」である英国系投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズからの買収提案は「助け舟」になる可能性があった。買収が成立して上場が廃止されれば、ほかの海外ファンドとの関係は解消される。

 背景の二つ目は、社内からの不信任だった。

 再建計画を進めるうえで執行役員や子会社の社長、事業部長らに厳しく計画達成を求めた車谷氏は、求心力を失っていた。

 15年に発覚した不正会計では、「チャレンジ」と称した実現不能な利益目標をトップが幹部や現場に押しつけたことが一因にあげられた。同じ構図が繰り返されている、との指摘が社外取締役に寄せられていた。

 社内の不信感は、CVCからの買収提案でさらに膨らんだ。

 東証1部への復帰を1月に果たしたばかりなのに、買収提案は上場廃止を想定している。

 1部復帰を「再生の象徴」と話していた車谷氏の周辺から「ホワイトナイト(友好的な買収者)が現れた」との声が出たことは、不信感に拍車をかけた。30代の東芝社員は言う。「何か黒いものを感じて、将来が不安になった」(小出大貴、細見るい)

別のファンドも買収狙う

 車谷氏の辞任は、CVCには逆風とみられる。既存株主との対立解消をメリットに挙げていたが、対立の当事者である車谷氏が東芝を去ったからだ。

 CVCがTOB(株式の公開…

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