コロナで帰国できず山梨に1年 コロンビア女性が絵本

平山亜理
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 コロナ禍で、母国に帰れずにいた南米コロンビアの女性アーティストが、1年以上を過ごした山梨での経験を絵本にする。多くの人に支えられた体験を、幻想的な物語にする。帰国を前に、17日には甲府市内のカフェで作品を展示し、販売する。

 絵を描くのはコロンビア人のテレサ・クリアさん(35)。自然や日本の妖怪をモチーフに水彩画などを描く。

 テレサさんは昨年2月、2カ月の予定で来日。ところがコロナ禍でコロンビアの国境が封鎖になった。ほかにも米国人やコロンビア人、ブラジル人の計4人の女性アーティストが同じ境遇だった。

 その時知り合ったのが、甲府市内で外国人を支援している「アンサーノックス」代表取締役の渡辺郁さん(50)だった。在留資格の関係で、働くこともできない。そこで渡辺さんはテレサさんたちに似顔絵を描いてもらうよう頼んだ。テレサさんには「私を妖怪にしてみて」と頼むと、アマビエ姿になっていた。

 これは面白い、と考えた渡辺さんは、テレサさんたちが描いた似顔絵を売り、滞在費にする支援プロジェクトを始めた。昨年末までに似顔絵の依頼数は150件にのぼり、寄付金の総額は約124万円となった。甲府市協働支援センターに壁画を描くなど様々な形で活動できる機会も設けた。

 支援を受けた3人で、子供向けの絵本を作ろうということになった。3人が船で到着した場所を冒険する物語だ。霧で船が動かなくなり、身動きができずに不安な思いをするが多くの人に助けられるという話だ。

 コロナを濃霧に例え、風景は山梨をイメージ、果物の形の建物や富士山も描いた。登場人物は、テレサさんら主人公をのぞいて、みな妖怪。渡辺さんも着物を着た猫の姿で現れる。まだ、3人が分担して絵を描いている段階だ。日本で出版した後、コロンビアでも出したいという。

 テレサさんは、幼い頃、叔父からもらった日本土産の小さなこけしを、今も大切にしている。それが日本文化に興味を持つきっかけにもなった。

 テレサさんは、「渡辺さんは、私たちにとって母のような存在。彼女がいなければどうなっていたか分からない」と話す。渡辺さんの誕生日には、コロンビアの家族に頼み、感謝の気持ちを伝える動画のメッセージを送った。

 メッセージに涙した渡辺さんは、テレサさんを「見えないものが見え、優しい世界を感じる人」と評する。コロナで混沌(こんとん)とした世の中で、支援の良い連鎖が生まれたと感じているという。

 テレサさんは山梨に滞在し、日本の文化から様々な刺激を受けた1年を、「かけがえのない時間だった」と振り返る。4月27日に、コロンビアに帰ることが決まった。帰国を前に、17日正午から午後6時まで、甲府市中央4丁目のカフェ「Le Koppi (ルコピ)」で、作品10点を展示し、3千円から7千円で販売する予定だ。手作りのコロンビアの菓子やパンも売り、帰国費用にあてる。平山亜理