阿蘇の「ラピュタの道」復旧のめど立たず 地震から5年

熊本地震

後藤たづ子
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 2016年4月の熊本地震で、阿蘇地域では道路の寸断が相次いだ。国道や県道は着実に復旧が進んでいるが、被災したままの状態にあるのが熊本県阿蘇市の市道狩尾(かりお)幹線だ。そのたたずまいから「ラピュタの道」と呼ばれて観光客にも親しまれたが、今も復旧のめどが立っていない。

 市西部の阿蘇外輪山斜面を上る全長約5・7キロの道路。市や地元住民によると、1960年代に畜産用の農道として国の機関が整備し、現在は市道となっている。ふもとの人たちが外輪山上の牧野(牛を放牧する草原)と行き来するために使っていた。

 熊本地震の数年前から、雲海に浮かぶように突き出た尾根を急カーブする道の景観が、宮崎駿さん原作のアニメ映画にちなんで「天空の道」「ラピュタの道」として知られるようになった。近くに大型バスが止まったり、一部の観光客が道路上を歩いたりして農作業車の通行に支障が出ることもあり、市が駐車場や遊歩道の整備も予定していたという。

 市によると、地震後の調査で31カ所の被害を確認し、復旧費は見積もりで約100億円にのぼった。国の災害復旧事業の補助を得られても地元負担は大きく、通常の方法での復旧は断念。国直轄の砂防工事や治山事業の対象にもならず、方策を見いだせずにいる。一方、市民からは昨年9月、6千人余りの署名を添えた請願が提出され、市議会は国に道路復旧への支援を求める意見書を可決した。

 外輪山上にある牧場の組合長で、特産のあか牛を放牧している中川利美さん(72)によると、地震前は牧場まで15分で行けたのが、今は回り道をして50分かかる。「生まれたての子牛と母牛を運ぶ時などは不安」。地元住民にとっては、外輪山一帯の草原維持のための野焼きにも、重要な作業道だった。

 阿蘇では昨年10月、地震で一部不通になっていた国道57号が2ルートで復旧し、今年3月には崩落した橋に代わる新阿蘇大橋も開通した。「国道はもちろん最優先で復旧すべきもので喜ばしいが、狩尾幹線も復旧しないと地震前に戻ったとはいえない」と中川さんは話す。(後藤たづ子)