第1回母と別れるか、異国に行くか 迫られた兄弟の「答え」

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小池寛木
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 親元での子育ての環境が整わず、乳児院児童養護施設に託される子どもたちがいます。両親、あるいはどちらかの親が外国人という子どもも少なくありません。言葉や文化の壁、在留資格、国籍……。施設の職員も、子どもたちも、さまざまな困難に向き合っています。

 関東地方の児童養護施設で暮らしていたある兄弟は、兄が10歳、弟が7歳のとき、あまりに理不尽な選択を迫られました。母と別れるか、見ず知らずの国に行かされるか――。

 「行方不明の母が見つかった」

 兄がその知らせを受けたのは2010年のことだった。

 タイ人の母は、日本に滞在するための在留資格を持たない非正規滞在状態にあった。入国管理局(当時)に摘発され、タイに強制送還されることになったという知らせだ。

 そのとき兄弟は施設に入って3年。日本人の父はすでに亡くなっていた。母は友人に幼少の兄弟を預けて、そのまま帰ってこなかった。

 兄はタイ国籍、弟は出生届が出されず無国籍だった。この兄弟にもタイへの強制送還の命令が下ろうとしていた。

 でも兄弟は日本生まれ、日本育ち。日本語しか話せず、タイはまったく知らない土地だ。

 当時52歳だった施設長の男性は兄弟に尋ねた。

 「法律ではお母さんはタイに行かないといけないんだ。君たちは日本に残りたいか、聞かせてほしい」

 弟はよく理解できない様子で言った。

 「お兄ちゃんについて行く」

 兄は夜、布団の中で泣いた…

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