「節税保険」の勧誘 外資系生保が代理店に手法指南か

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柴田秀並
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 課税逃れのような使い方阻止に国税庁が動いた企業向け保険について、販売する外資系生保が節税を指南する勧誘資料を作っていたことがわかった。朝日新聞が内部資料を入手した。会社の資産を個人へ「お得に」移せるとして人気だったが、会社側はこうした勧誘を「禁止」と説明していた。金融庁も実態を把握しており、適切な営業だったかを調べている。

 問題になっているのは「逓増(ていぞう)定期保険」と呼ばれる商品の一部で、外資系のマニュライフ生命やエヌエヌ生命、明治安田生命などが扱う。企業が加入し、役員の死亡時などに保険金を受け取れる。保険特有の課税ルールを使い、税金を抑えて会社の資産を個人へ「お得」に移せるとして、「名義変更プラン」という利用法が一部で横行していた。

 朝日新聞は、販売シェア首位のマニュライフ生命の内部資料を入手した。名義変更プランを代理店などへ説明する内容だ。複数の販売関係者によると、代理店への研修や説明に使われた資料も含まれているという。

 ある文書には「代理店研修資料 研修終了後、要回収」と記されていた。保険契約を経営者個人へ名義変更した際の金額例を紹介しており、「対個人払込377%」との数字も並ぶ。個人が払ったお金の3・8倍を受け取れるとの趣旨だ。

 どんなからくりで、こうした使い方ができるのか。

 この商品は、受け取れる保険金が保険期間の当初に低く、その後増えていく(逓増する)。途中で契約を解約した際に戻る解約返戻金が初期に極端に少なく、ある時期を超えると跳ね上がることが特徴だ。契約を法人から役員個人へ譲渡する時は返戻金相当額で評価されるため、初期に個人へ名義変更すれば低額で契約を移せる。

 内部資料は保険料を年約2400万円払うケースを例示。会社が4年目まで払い、個人へ名義変更する。譲渡額となる解約返戻金は、4年目だと400万円弱と低い。個人はこの額を支払い、契約を買い取る。5年目の保険料2400万円を自ら払って契約を解約すれば、1億円超に急増した返戻金を受け取る。計2800万円弱の支払いに対し、4倍近くを受け取れる計算だ。受け取り後の所得税の計算法なども示されている。

 別の文書は「資産移転プラン 会社→個人」の表題で、「顧客および代理店への配布厳禁」とある。移転について「短期間で個人財産の形成が実現可能」「法人からの借入金返済資金」などとの記載があった。

 マニュライフ生命など、このタイプの商品を扱う会社は「節税目的での販売は禁止」との立場。顧客に販売する際、将来の税務リスクについての確認書に署名してもらう対応などをとっている。ただ現場では、「節税話法」での販売が一部で広がっており、こうした利用法を封じる税務見直しを国税庁が3月半ばに生保業界へ通知。近く見直し案を公表する。

 16日にあった生命保険協会の会見で根岸秋男会長(明治安田生命保険社長)は「保険本来の趣旨・目的から逸脱するような販売がなされてはならないのは、当然と認識している」と言及。「会員各社で適切な販売に努めていると承知している」と語った。だが今回入手した社内資料から、一部の保険会社では代理店などへ不適切な勧誘を指南していた疑いが、うかがえる。

 マニュライフ生命は朝日新聞の取材に「節税目的で商品の勧誘をすることを禁止している」とコメント。社内資料の存在について見解を求めたが「コメントできない」とした。金融庁も問題を把握し、同社から事情を聴いているとみられ、今後の対応が注目される。(柴田秀並)

節税というより「租税回避

 保険会社が様々な「節税」商品をつくり、国税庁が税務ルールを見直して抜け道をふさぐ。こうした「いたちごっこ」が長年続くが、名義変更プランは「これまでより悪質さが一段上」(税務関係者)と言われる。税法が想定していない不自然な行為で、節税というより「租税回避」ともとれる利用法のためだ。

 多くの生保は税務リスクを顧…

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