米が続ける「あいまい戦略」 狙うは中台の現状維持

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台北=石田耕一郎 ワシントン=園田耕司 北京=高田正幸 安倍龍太郎、菅原普
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 米バイデン政権が台湾支援を強めることで、長らく保たれてきた米国・中国・台湾の微妙なバランスが揺らいでいる。「民主主義」「人権」の旗を掲げる米国と、隣人である中国との間で板挟みの日本はどう振る舞うべきか。16日の日米首脳会談でも、台湾への関与は主要なテーマの一つとなる見通しだ。

 「台湾の西南空域の高度6600メートルにいる中共(中国共産党)軍機、すでに台湾のADIZ(防空識別圏)に進入している。すぐに退去しなさい」

 冷静な声で発せられた警告への答えは、あっけないほど短かった。

 「ここはすべて中国の空域だ。君たちもすぐに慣れるよ」

 10日午前、台湾の空域監視を担う台湾軍兵士と、上空の中国軍機のパイロットとの無線交信とみられるやりとりだ。台湾国防部(国防省)によると、この日は延べ4機がADIZに進入した。

 「最近は中国側が思いもよらない(挑発的な)応答をするようになっている」。そう分析するのは、このやりとりを傍受した台湾軍の元レーダー担当、許耿睿さん(49)だ。

 台湾当局によると、台湾軍は中国軍機への警告などの緊急時には、民間でも使っている航空無線を使う。周囲の航空機にも危機を知らせるためだ。許さんは自作の無線機で中台間のやりとりの傍受を続け、フェイスブックに設けた「台湾西南空域」というアカウントで、中国軍機の動向を公開。1万人余りのフォロワーがおり、「人々の防衛意識を高めたい」と語る。

 台湾国防部のまとめでは、中国軍機の台湾ADIZ進入はほぼ毎日繰り返されている。国防部が中国軍機の動向を公表し始めた昨年9月以降、年末までの約3カ月半でADIZ進入は延べ約150機。だが、今年は4月中旬までに延べ250機を超えた。対地ミサイル攻撃能力を持つH6爆撃機の機影もあった。

 「台湾攻撃を想定した訓練」。そう伝える台湾メディアもある。しかし、中国軍機の度重なる進入行為の背景には、米バイデン政権が矢継ぎ早に打ち出す台湾支援政策があった。(台北=石田耕一郎)

台湾は「重要なパートナー」と強調

 「バイデン政権は純粋に台湾を支えることを保証する」

 アーミテージ元米国務副長官は15日、台北の総統府蔡英文(ツァイインウェン)総統と会談し、笑顔でこう強調した。「(脇に座った)総統に背を向けたくはない」と述べて演台の角度を調整する配慮まで見せた。アーミテージ氏らはバイデン大統領の要請で、スタインバーグ元国務副長官らとともに非公式代表団として訪台。政権高官は「米国の台湾と民主主義への関与を示す重要なシグナル」と意義を説明する。

 会談で蔡氏は、中国による台湾への軍事圧力に触れ、「インド太平洋地域の平和と安定に対する脅威だ」と指摘し、「米国など理念の近い国々と協力して(中国の)挑発行動を防いでいく」と呼びかけた。

 バイデン政権は発足当初から台湾寄りの姿勢をより鮮明にしている。

 まず、バイデン氏が2月に中…

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