「芸術の神は信じない」松本隆 名曲のやさしさの秘密は

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文・畑川剛毅 写真・西畑志朗
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 「赤いスイートピー」「ルビーの指環(ゆびわ)」「君は天然色」……。おびただしい数のヒット曲を生み出した作詞家、松本隆さん(71)は昨年、デビュー50周年を迎えました。記念の特別アルバムの発売も7月に控えています。最近は作詞活動に消極的な発言を続けていましたが、ここに来て久しぶりに自らドラムをたたき、新たな詞作りに意欲を見せています。希代のヒットメーカーの詞の原点、貫いてきた思い、そして自身の現在地について、インタビューで存分に語っていただきました。(文・畑川剛毅 写真・西畑志朗

 ――松本さん作詞の「瑠璃色の地球」が昨年注目されました。

 もともとは、1986年に、松田聖子さんが神田沙也加さんをみごもったのに気づいて、彼女なら、普通のラブソングじゃなくて、もっと深くて大きな、人類愛みたいなものを歌えるだろうと思って、書いたんです。

 東日本大震災の時に、ツイッターで、避難所にいたファンの方から「みんな暗くなっているので、何か1曲プレゼントしてくれませんか」とメッセージをもらい、ユーチューブに上げる形で「瑠璃色の地球」をプレゼントしたら喜んでくれて、電池が残っているスマホの周りに人の輪ができて、みんなで聞いてくれたと聞きました。そんな記憶があり、「夜明けの来ない夜は無いさ」と歌い出す歌詞からも、コロナの時代にも通用する救いの歌になりうるという思いもありました。

 ――それで、この歌を歌った動画の投稿をSNSで呼びかけました。

 呼びかけたら、あっという間に全国から200人以上集まり、僕が制作費100万円、自腹を切って、仲間とビデオを編集してユーチューブに上げました。上白石萌音さんや中川翔子さんがカバーしてくれる動きもありました。「本家」の松田聖子さんが再レコーディングしてくれたけど、こちらから働きかけるとか、全くしていません。最後は紅白歌合戦で歌ってくれて。かけたのはわずかな制作費だけで、地方からの動きが中央を動かした。一連の動きはとても興味深かったし、自信になりました。

はっぴいえんど」のドラマーが

 ――今年は、ほぼ半世紀ぶりにドラマーとして復活するとか。

 僕はもともと、細野晴臣さん、大滝詠一さん、鈴木茂さんと僕の4人で組んだバンド「はっぴいえんど」のドラマーです。神戸の北野にカフェが空いていると聞き、はっぴいえんどの45周年ライブでたたいたドラムを置いて、新しい才能とバンド活動というものをもう一度やりたいなと考えました。これまで、45周年などで一時的にドラムをたたいたことはあったけど、いつもバイト感覚でした。でも今度は本気です。地方の一カフェから始めます。「瑠璃色の地球」も地方から始まったから。

 コロナの影響で、ライブで何万人集めたと威張れる時代じゃなくなりました。この後遺症は長く続くと思います。コロナが収まっても別のウイルスが出てきたら同じことが繰り返されるでしょう。ライブじゃなくて、配信は配信でお金を生むシステムを作っておきたいと思います。

 ――ここのところ、作詞など自身の音楽活動については消極的な発言が続いてきました。急に転換したのはなぜですか。

 最近の僕にすごく影響を与え…

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