日本の人材が世界で力を持つには 「硫黄島」俳優の思い

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藤えりか
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シネマニア経済リポート:DXで挑むハリウッド(中)

 昨年12月初め、ネット会議システム「ズーム」の画面で、2人の男性が英語で短い演技を続けた。「なんでここにいるんだ」「忘れたのか」「出て行ってくれ」。表情を大げさにあらわにしたり、押し殺したり。同じセリフでも様々な顔つきや言い方で表現していく。

拡大する写真・図版インタビューに答える俳優の松崎悠希さん=2021年3月、東京都中央区、加藤諒撮影

語学力の問題だけではありません。「日本の芝居」はハリウッドでは通用しないといいます。ポッドキャストで藤えりか記者が解説します。

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 一人はハリウッドなどで活動を続ける俳優の松崎悠希さん(39)。もう一人は海外作品を中心に日本の俳優らをキャスティングする会社「カイジュウ」(東京・渋谷)の岩上紘一郎社長(36)。「史上最高のセルフテープの撮り方」と題し、ハリウッドなどをめざす俳優ら向けに、無料解説を約3時間続け、400人以上が視聴した。「海外作品と、日本で一般的に受け入れられる作品では、演技の温度が微妙に違うんですよ」。松崎さんは模擬演技の合間に語った。

 「セルフテープ」とはオーディション用に俳優が演技を撮影した動画だ。米国でここ10年ほどで増えた形式で、対面オーディションが減るコロナ下でさらに急増。そのうえ最近は多様性を重んじる流れから、米スタジオが撮影も俳優の起用も日本など米国外で進める例が増え、日本の俳優がセルフテープを求められる場合も多くなった。

拡大する写真・図版海外作品を中心にキャスティングを請け負う企業「カイジュウ」の岩上紘一郎社長(左)。日本の俳優たちのオーディション突破などに必要な映像資料作りの指導もしている=2020年、東京、岩上さん提供

 ハリウッドでチャンスをつかむための大切な一歩で、米国ではセルフテープの撮り方を教えるビジネスも盛んだ。だが、日本では一般的でなく、戸惑う俳優も少なくない。

 岩上社長は、米国でハリウッド大作「アベンジャーズ」「ラストスタンド」「ウルヴァリン:SAMURAI」などの製作や、キャスティングなどにも携わった末に2015年、「世界で活躍する日本人の輩出を」と同社を設立した。それだけに「日本にいい役者がいるのを示したくても、セルフテープが水準に達さずもったいないことが多い」と感じていた。だからこその無料開催だ。

拡大する写真・図版映画「硫黄島からの手紙」の撮影現場で、クリント・イーストウッド監督(右)と並ぶ俳優の松崎悠希さん=2016年、米カリフォルニア州バーストウ、松崎さん提供

 松崎さんも無償で参加した。故郷・宮崎を出て18歳で渡米以来、「硫黄島からの手紙」「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」などハリウッド大作に出演を重ねる一方、苦労も人一倍体感してきたためだ。

 松崎さんが初めてセルフテー…

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