熊本地震から5年「血が巡りだした」 垂玉温泉復活

熊本地震

金子淳
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 熊本地震で休業を余儀なくされた南阿蘇村の垂玉(たるたま)温泉・山口旅館(1886〈明治19〉年創業)。本震から丸5年となる16日、日帰り温泉「瀧日和(たきびより)」として復活した。午前10時のオープン前から常連客らが集まり、8代目の山口雄也さん(40)、7代目の父・一尚(かずひさ)さんらが客を出迎えた。雄也さんは「この日を迎えられ、多くの支援とサポートに感謝です。常連のお客さんの顔が見られてうれしい。安心した。建物は変わったが、たくさんの思い出が残っている。ここから新たなスタートです」と力強く話した。

 地震前は年に10回ほど訪れていた合志市の平田初子さん(81)はオープンを待ちわび、2回下見に来たという。「楽しみにしとった。ここは、お湯も料理も良かった。何より、よか人たちばっかりやった」という。雄也さんに出迎えられると「大ごとやったとですね」と話しかけ、笑顔を見せた。

 垂玉温泉・山口旅館は、本震で山が崩れ、大量の土砂が旅館に押し寄せた。雄也さんは約半月後、露天風呂があった金龍の滝近くの泉源を探した。かき分けた土砂からチョロチョロと湧き出ていたのは手触りも匂いも「垂玉温泉」だった。「またやれる」。希望が湧いた。

 だが、6月下旬に降った豪雨で、片付け始めた敷地に再び土砂が流入。「大雨のたびに、こうなってしまうのでは……」と気持ちがなえた。それでも、ボランティアの懸命な作業や、きれいになっていく旅館を見て、「血が巡りだした」。背中を押され、再開を決意。「支援を受けた人たちに、家族と来てもらえる場所を作って恩返ししたい」

 安全面を考え、滝の下の露天風呂と、旅館としての営業は断念した。だが、貸し切り湯やカフェ、滝が見える露天風呂を新設。温泉の蒸気を利用した蒸し釜で温野菜も楽しめる。

 「みなさんと一緒に新しい垂玉温泉を作っていきたい」。新たな歴史が始まった。(金子淳)