傍聴人のみなさまへ 「儀式」の最高裁弁論、変化の兆し

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阿部峻介
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 大理石や花崗岩(かこうがん)の壁に囲まれた荘厳な法廷。裁判官たちが入ってくると、弁護士が用意した紙をひたすら読み上げて閉廷する。傍聴人は置いてけぼり――。そんな「儀式」のような最高裁の弁論の様子が、変わりつつある。(阿部峻介)

初めて配ったカラーのチャート

 「傍聴人にお配りしていますように、補助金の交付の流れはフローチャートに書いています」

 今年1月、第三小法廷。国と栃木県が補助金の返還をめぐって争った裁判の弁論で、林道晴裁判長は傍聴席まで視線をやり、異例の「資料説明」をした。傍聴人は、カラーのチャートと事件概要のメモを交互に見ながら耳を傾けた。

 昨年11月に第一小法廷で開かれた強盗殺人事件の弁論では、弁護士が現場の見取り図を記したパネルを持ち込み、書面を見ずに40分にわたって「無罪にすべき理由」を熱っぽく語り続けた。いつもは手元の書面に目を落としがちな裁判官も、身を乗り出すように聞いていた。

 最高裁が当事者の意見を聞く弁論を開くのは、二審の判断を変えるときが多い。判決が見直されると予想できるためか、弁論の当日は弁護士が事前の提出書類を「陳述します」とだけ言って読み上げた形にして、裁判官も特に突っ込まずに終える――。そんな光景も珍しくなかった。

 そこに問題意識を持ち、弁論を活性化させようというのが近年の動きだ。ベテラン裁判官は「最高裁の弁論が、わざわざ来てくれた傍聴人が何が起きたのかも分からないような儀式でいいのか。司法がどう機能しているのかを実感できる場であるべきだ」と語る。

 2017年から「傍聴人の皆様へ」と題した事件概要のメモを配るようになり、20年からはホームページにも掲載。補助金をめぐる今年1月の弁論で配ったチャートは、事件の構図が一目でわかるような内容だった。

 また、論点を絞って当日の弁…

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