ブタの胃で見つかった「スイス菌」 ヒトの胃炎の原因に

野口憲太
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 胃がんなどの原因になる「ピロリ菌」の仲間で、ブタの胃から見つかった細菌「ヘリコバクター・スイス」が、ヒトの胃にも病気を引き起こしていた――。そんな研究成果を、国立感染症研究所感染研)などのグループが発表した。

 「ピロリ菌」こと、「ヘリコバクター・ピロリ」は1982年に発見され、ヒトの胃に感染して胃潰瘍(いかいよう)や胃がんを引き起こすことがわかっている。

 一方、当時からヒトの胃には、「ピロリ菌ではない同属の細菌」がいることが知られていた。

 その後、そのなかの多くが、ブタの胃から見つかった「ヘリコバクター・スイス」(スイスはラテン語でブタの意味)と同じ細菌だとわかった。

 ただ、実験室内で培養することが難しく、ヒトの病気の原因になっているのかどうかは、はっきりわかっていなかった。

 研究チームは、胃と同じような酸性度の高い環境を作り、ピロリ菌の場合よりも長い時間をかけることで、「スイス菌」の培養に成功した。

 胃の内部の免疫組織に腫瘍(しゅよう)ができる「胃MALTリンパ腫」などの患者3人からスイス菌を取り出し、マウスに感染させたところ、患者と同じような胃の炎症が起こることを確認。炎症が起こっている部分から、スイス菌をもう一度取り出すことにも成功した。

 ある微生物が、感染症の原因だと確かめるためには「コッホの原則」と呼ばれる4条件、①ある病気に特定の微生物が見つかること、②その微生物を分離(培養)できること、③動物に感染させると同じ病気を引き起こすこと、④③の動物から同じ微生物を分離できること、を満たす必要がある。

 これまで、①はわかっていたが、今回の研究で②~④が確かめられ、スイス菌がヒトの胃の病気の原因だと証明できたことになる。

 さらに、患者から取り出したスイス菌の全遺伝情報を調べたところ、感染のおおもとはブタからであると考えられた。

 患者が、日常的にブタと接する機会がないことから、一つの可能性としてチームは、「豚肉などの食品を介した感染が考えられる」としている。

 ピロリ菌の場合は、吐く息に含まれる成分を調べるなどの検査で感染の有無がわかるが、スイス菌を検出できる簡単な検査方法はまだない。

 研究チームの林原絵美子・感染研主任研究官は、「患者はそれほど多くないと考えられるものの、ピロリ菌の検査で陰性だが胃炎がある人はヘリコバクター・スイスの感染が原因の可能性がある。検査法を開発するだけでなく、感染経路も今後詳しく調べる必要がある」と話している。

 論文は感染研北里大、杏林大などのチームが、米科学アカデミー紀要で報告した。ウェブサイト(https://doi.org/10.1073/pnas.2026337118別ウインドウで開きます)で読める。(野口憲太)